検索

山梨学院を甲子園優勝に導いたビッグイニング対策「1点を惜しんで安易な前進守備をしない」「無駄な走者を出さない」 (2ページ目)

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 無駄な走者を許さないだけではない。安易な前進守備もしなかった。象徴的だったのは準決勝の広陵戦。0対0の1回裏、一死三塁、1対1の3回裏、一死一、三塁ともに当然のように内野はうしろに守ることを選択。1対0とリードしている広陵が2回表一死三塁で前進守備を敷いたのとは対照的だった。この守り方について尋ねると、吉田洸二監督はこう言った。

「9回トータルで考えて、1点を4回とられても4点なので......イニング2点や3点とられると重くのしかかってくる。立ち上がりだったので1点ならいいと(守備位置を)下げました」

【9回3失点以内ならOK】

 決勝の報徳学園戦でも、その考え方はぶれなかった。4回表の守り。連打と送りバントで一死二、三塁のピンチを迎えたが、内野の守備位置はうしろ。1点OKの態勢をとった。この場面は林が初球を投げようとしたときにバランスを崩し、ボークで先制点を許したが、すかさず伝令を送った。キャプテンでショートを守る進藤天は言う。

「試合前から点をとられることは覚悟しようということだったし、(二、三塁の状況から)もう1点はOKだったので。伝令も2点目OKという話が来ました」

 1点とられ、なおも一死三塁のピンチで内野の守備位置は前進ではなく定位置。「絶対に1点もやらない」というわけではなかった。進藤は続ける。

「できたらホームでアウトとれたらいいなぐらいの考えです。(結果的にタイムリーヒットを打たれたが)2点はそんな痛くなかったです」

 投げている林自身も、準決勝までの5試合をほぼひとりで投げてきた自らの状態を冷静に把握。「連投なので苦しい場面が続くのは想定していました。とにかく最少失点でと思っていた。9回通して3点以内に抑えれば、どこかで味方が点をとってくれると思っていました」と目の前の失点ではなく、あくまで9イニングトータルで考えていたと言った。この回、結果的に2点は失ったが、ビッグイニングになることはなかった。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る