山梨学院を甲子園優勝に導いたビッグイニング対策「1点を惜しんで安易な前進守備をしない」「無駄な走者を出さない」 (3ページ目)

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 山梨学院は今大会で54イニングを戦ったが、そのうち失点したのは9イニング。もっとも多くとられたのが決勝の4回表の2点で、ほかの8イニングはすべて最少失点の1点だった。無駄な走者を出さず、安易に前進守備をせず、1点を惜しまない。これが徹底できたことがビッグイニングを許さない守りにつながった。

【冷静さを欠いた報徳バッテリー】

 冒頭で紹介した決勝の5回裏の「7」という数字。報徳学園側から見ると、悔やまれる部分は多々ある。始まりが一死無走者から7番・大森燦に与えた四球だったこと。さらには投手の林、伊藤光輝の8番、9番にストレートを打たれて連打を浴びたことだ。

 準決勝までの5試合でチーム打率.329をマークしていた山梨学院打線のなかで、伊藤はチームワーストの打率.133(15打数2安打)、大森はワースト3位の打率.250(16打数4安打)と当たりがなく、確実にアウトをとりたい打者。林は17打数で5安打を記録しているが、安打はすべてストレートを打ったもので変化球は苦手にしている。ストレート3球で1−2と追い込んでから、もう1球ストレートを続けてレフトフェンス直撃の二塁打を打たれたが、避けられる一打だった。この配球について、捕手の堀柊耶はこう言った。

「(林は)半速球に強いと思ったので。同じ球を続けすぎました。それで抑えられると思ったのですが......」

 4回までわずか47球。1安打、無失点とほぼ完璧な投球を見せていた先発の間木歩は、この回の投球をこう振り返る。

「ピッチャーの林くんにフェン直を打たれてから、制球が甘くなった。ピッチャーというので、ちょっと油断した部分がありました。アウトコース低めの要求だったんですけど、中に入って浮いてしまった。後悔はあります。9番に対しては力勝負でいってしまって甘く入って打たれた。もっとコーナーをついて、変化球を使って緩急をつければよかったと思います」

 この日の調子、間木の持ち味である変化球の切れを考えれば、丁寧に投げさえすれば下位打線の出塁は防げたはず。4回までテンポよく抑えていたがゆえに慎重さを欠いてしまった。

 いずれにしても、最少失点に抑えるための準備と対策をしているチームが、頂点に近づく。これを実感させられる決勝戦だった。

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