山梨学院を甲子園優勝に導いたビッグイニング対策「1点を惜しんで安易な前進守備をしない」「無駄な走者を出さない」

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 どうにも止まらない──打ちも打ったり、5連打。さらにはダメ押しともいえる本塁打。山梨学院と報徳学園のセンバツ決勝戦。5回裏に山梨学院のスコアボードに刻まれた「7」という数字は、あまりにも大きかった。

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【ビッグイニングはなぜ生まれる】

 高校野球では、しばしばビッグイニングが生まれる。今大会も準々決勝以降の7試合中6試合でビッグイニングがあった(準決勝・山梨学院対広陵=9回表に山梨学院が5点。大阪桐蔭対報徳学園=3回表に大阪桐蔭が5点。準々決勝・作新学院対山梨学院=3回裏に山梨学院が7点。専大松戸対広陵=広陵が2回裏に6点。大阪桐蔭対東海大菅生=3回裏に大阪桐蔭が4点)。

 ビッグイニングになる要因として、代表的な例は四死球やエラー、バント処理ミスだ。山梨学院戦の作新学院は6四死球、大阪桐蔭戦の報徳学園は4四死球を与えている。広陵戦の専大松戸は投手・平野大地のバント処理ミスが絡み、大阪桐蔭戦の東海大菅生は四球で始まり、バント安打2本、フィルダースチョイスで傷口を広げた。無駄な失点を減らすためには、いかにこれらを減らすことができるかがカギになる。

 もうひとつ、ビッグイニングになる要因は守備位置。守り方だ。たとえば、無死、もしくは一死二、三塁で前進守備を敷けば、ヒットゾーンが広がるだけでなく、二塁走者が大きなリードをとることができるためシングルヒットで2点は確実になってしまう。三塁走者の生還はあきらめ、2点目を阻止する守り方を選択できるかどうか。イニングや点差、相手との力関係を考慮し、"1点を惜しんで大量失点"することを避けなければならない。

 その意味で、もっともビッグイニングになる要因が少なかったのが山梨学院だった。エース・林謙吾は6試合51回3分の2を投げて、わずか6四死球。1イニングに2四死球を与えたのは一度もない。守備も固く、6試合で3失策。準々決勝以降の3試合は無失策だった。

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