偏差値66の石橋高校が「3度目の正直」で甲子園へ 文武両道の公立校がいかにして県内屈指の強豪校になったのか (3ページ目)

  • 高木遊●文・写真 text & photo by Takagi Yu

 注目選手は、投手と遊撃手を兼ねる入江祥太(2年)。中学時代は硬式野球チームの宇都宮県央ボーイズでプレーし、三塁手兼投手(おもに抑え)としてボーイズリーグの全国大会で春は優勝、夏は準優勝の経験を持つ。地元および近隣の中学軟式野球部出身者の部員が多いチームのなかで、傑出した実績だ。

「いい環境で勉強ができるから」と作新学院中学に通っていたが、高校は「文武両道の進学校で、野球が強かったから」という理由で石橋に入学した。高校入学後は「選手主体でやるので楽しいです」とのびのびと成長を続けている。

 入江の特長は、投手としては最速136キロのストレートと縦・横2種類のスライダーなどの変化球を生かしたコンビネーションで打ちとり、野手としては状況に応じた打撃ができるところだ。家族代々、中日ドラゴンズのファンで、将来は「東京六大学でプレーし、プロ野球に進みたいです」と語る。

 幼い頃から夢見てきた甲子園でのプレーについて、こう意気込みを語る。

「自分たちが楽しんで、見ている人たちにも楽しんでもらえるような野球がしたいです。進学校で勝てたらカッコいいと思うので、勝ちたいです」

 ほかの部員からも「見ている人を楽しませたい」という言葉が多く聞かれた。それはなにより、彼らが野球を楽しんでいるからにほかならない。

 突出した進学校でもなければ、過疎や災害などひどく困難な状況に置かれているわけでもない。それでも思う存分、野球を楽しむ石橋ナインの姿は、甲子園で多くの人の心を動かすだろう。

『離島熱球スタジアム』 鹿児島県立大島高校の奇跡

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著者プロフィール

  • 高木 遊

    高木 遊 (たかぎ・ゆう)

    1988年生まれ、東京都出身。大学卒業後にライター活動を開始し、学童・中学・高校・大学・社会人・女子から世代別の侍ジャパン、侍ジャパントップチームまでプロアマ問わず幅広く野球を中心に取材。書籍『東農大オホーツク流プロ野球選手の育て方〜氷点下20℃の北の最果てから16人がNPBへ〜』(樋越勉著・日本文芸社)『レミたんのポジティブ思考"逃げられない"な"楽しめ"ばいい!』(土井レミイ杏利著・日本文芸社)『野球で人生は変えられる〜明秀日立・金沢成奉監督の指導論(金沢成奉著・日本文芸社)では、編集・構成を担当している。

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