偏差値66の石橋高校が「3度目の正直」で甲子園へ 文武両道の公立校がいかにして県内屈指の強豪校になったのか (2ページ目)

  • 高木遊●文・写真 text & photo by Takagi Yu

 部員数は女子マネージャー4人を含め37人。偏差値66の進学校で文武両道を掲げるため、練習時間は平日放課後の約2時間。グラウンドは野球部を含む5つの部との共用で、狭くて危険なため、放課後の練習でフリー打撃や内外野の連係プレーなどは、年間を通してほとんどできない状況だ。

 それでも、朝7時半から始業前までの約40分程度の時間をフリー打撃に充て、平日は曜日ごとに練習メニューやテーマを設けるなど工夫を凝らしてきた。

 日々の濃い練習に取り組んできた成果は、明確な結果となって表れた。県大会ではたびたび上位に進出し、2016年秋に県準優勝、17年春は4強、夏は8強、19年夏は8強、21年秋は準優勝、そして昨年秋は4強。昨秋にいたっては、新型コロナウイルスの感染者が相次ぎ、なかなかメンバーが揃わないなかでの躍進だった。また、1年生大会では強豪私学を抑えて優勝を果たしている。

【地域貢献と障害予防】

 そしてもうひとつ、選出の大きな要因となったのが、地域の医療関係者と連携した肩・ヒジ検診を兼ねた野球教室の開催だ。

 前監督の琴寄元樹(ことより・もとき/現・小山西監督)さんの呼びかけで始まり、毎年12月にNPO法人『医療サポート栃木』と協力して、地域の小学生を対象に肩・ヒジの検診を兼ねた野球教室を開催してきた。ここで野球の楽しさを伝えるとともに、早期の障害予防にも取り組んできた。

 主将としてチームを束ねる横松誠也も、小学4年時にこの教室に参加。その際、検診で「関節が硬い」と指導を受けたことで、「それから毎日ストレッチを欠かさずやるようになりました」といいきっかけになり、このチームの雰囲気に惹かれて「石橋で野球がしたい」と受験を突破して入部し、今やチームを引っ張る存在になった。
 
 地道な活動や日々の練習が周囲の評判を生み、文武両道でレベルの高い選手たちが集まるようになった。それが、安定した強さを生み出す要因になっている。

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