ドラフトでスカウトが密かに注目する「5人の隠し玉」。華々しい実績はなくとも大化けの可能性はある (2ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

ダイナミックなフォームから最速159キロを誇る明星大の谷井一郎ダイナミックなフォームから最速159キロを誇る明星大の谷井一郎この記事に関連する写真を見る谷井一郎(明星大/投手/181センチ84キロ/右投左打)

 包み隠さず、はっきりと書こう。余裕のある球団でなければ手の出せない「訳ありドラフト候補」である。

 ノーラン・ライアン(元レンジャーズ)をはじめ数々のMLB投手からヒントを得た「ダイナミック・ライアン投法」は一度見たら忘れないインパクトがある。全身をフル稼働させて放たれる剛速球は、最速159キロをマークする。

 それなのに、この剛腕が騒がれない理由はリーグ戦でもほとんど登板実績がないからだ。アクションの大きなフォームゆえかボールを制御しきれず、四球を連発してしまう。明星大は首都2部リーグ所属ながら、谷井はチームの主戦力にもなれていない状況が続いている。

 とはいえ、得がたく蠱惑的なキャラクターでもある。自身の特殊な投球フォームについて、谷井はこう語っていた。

「左足を高く上げることで骨盤ごと引き上げ、位置エネルギーを得ています。そこから並進運動につなげていくと強く回転できて、スピードが速くなるんです」

 このように自身の技術について語れる頭脳もある。プロで実戦経験を重ねるなかで大化けする可能性も捨てきれない。本人は「育成(ドラフト指名)でもプロに行きたい」と語るほど、ハングリー精神をむき出しにしている。

 誤解を恐れずに言えば、一発勝負の社会人野球では戦力になるのは難しいだろう。才能が花開く可能性があるとすれば、むしろプロの世界だ。こんな暴れ馬にも門戸を開いてほしいと願わずにはいられない。プロの度量の大きさと育成力が問われている。

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