京大野球部が春のリーグ戦で快進撃。強豪私立大と互角の戦い、秀才軍団に何が起きたのか

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

 ただ足でかき回すだけではない。第1戦は2対1とリードした8回裏に、主砲・山縣薫(天王寺)のレフトオーバーの2点適時打でダメ押し点を奪っている。山縣は京大に進学後、急成長した選手だった。

「高校野球では強豪私学に阻まれて、うれしい気持ちになったことがないんです」

 山縣はそう打ち明ける。高校時代は身長176センチ、体重65キロの非力な外野手だった。

 前監督であり今は総監督の青木孝守氏は、京大の選手たちに「大学の3〜4年で私学との差を縮めよう」と発破をかけてきた。山縣は大学で筋力トレーニングに本格的に取り組むようになり、身長177センチ、体重77キロのたくましい肉体を獲得した。走攻守に高い身体能力が生きるようになり、今では不動のレギュラーに君臨している。センターからの強肩はリーグトップクラスと言っていいだろう。

野球未経験ながら投手コーチを務める三原大知(写真右)野球未経験ながら投手コーチを務める三原大知(写真右)この記事に関連する写真を見る

野球未経験の投手コーチ

 関西大との開幕戦に4対2と勝利した京大は、第2戦こそ2対4で落としたものの、勝ち点獲得をかけて第3戦を迎える。ここで京大は意外な投手起用を見せる。正捕手の愛澤祐亮(宇都宮)を投手として先発起用したのだ。

「奇策ととらえられてしまうんですけど、ピッチャーとしての実力順でいえば愛澤だなと。奇をてらったわけではありません」

 そう語るのは、学生コーチの三原大知(灘)である。三原は大学4年生ながら投手コーチを務めており、監督の近田から投手起用の権限を委任されている。

 なお、三原には野球のプレーヤー経験はない。高校では生物部に所属していた。「文化祭でいかに効率よくカエルを解剖できるかを考えていた」という、体育会の匂いのしない青年である。

 だが、高校時代からMLBのデータサイトを閲覧するなど、三原は筋金入りの野球マニアだった。投手の投げるボールの回転数、回転軸、回転効率といったデータに着目し、趣味として知見を深めていた。

 3年前、京大野球部で弾道測定器・ラプソードを導入することになり、学生のアナリストを募集することになった。そこで入部したのが三原だった。元から投球成分の基礎知識があった三原は、即戦力として重宝がられた。三原は涼しげに言う。

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