希望しかなかった東海大菅生の大器が、絶望を経て再起するまで。甲子園は逃すも元プロ指揮官は「素材は高校生投手でナンバーワン」 (4ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

 試合後、鈴木の目に涙はなかった。

「甲子園で投げることだけを考えていたので、チャンスをつかめなくて本当に悔しい思いしかありません」

 高校野球で目指してきた「世代ナンバーワン」への思いを報道陣に聞かれた鈴木は、こう答えた。

「高校では世代ナンバーワンには全然遠くて、まだまだだなと感じました。でも、これから野球を続けていくなかで、常に目指していきたいです」

 目標としていた155キロには遠く及ばなかった。こんなはずではなかった。もっとやれたはずだった。鈴木の胸中にはやりきれなさが広がっていたに違いない。

 だが、若林監督は最後まで鈴木の才能への信頼を口にした。

「本当にいいピッチャーだと思いますけど、まだまだ勝てるピッチャーにはなれなかったのかなと。たぶん今年の高校生投手のなかで、素材とかボールの質を見たらナンバーワンじゃないですか」

 現時点ではプロ志望届を提出せず、すでに強豪大学へ進学する話が進んでいる。4年後に鈴木泰成はどんな姿を見せているだろうか。

「日本を代表する投手になりたい」

 その言葉が大言壮語ではなかったと思える日がきっとくる。鈴木の才能に惚れたひとりとして、そう信じている。

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