聖望学園が浦和学院を下し、13年ぶりの甲子園へ。6年前、高橋昂也に夢を阻まれたOBが後輩たちにエール (2ページ目)
岡部をリードした江口生馬(3年)は、元はファーストの選手だ。捕手だった三井颯大(3年)が春季大会後に膝を痛めたため代わりに捕手となった。今大会ではサードを守る三井から、捕手目線でのアドバイスを受けることも。捕手で主将、そして四番。重荷を軽くするために一度は四番を外れたが、決勝では再び四番を担った。
「プレーで引っ張るタイプではないので、僕にできることは挨拶とか礼儀とか、そういう部分をしっかりやっています」
控えめに言うが、準々決勝の武南戦では2ランを放つなど勝負強いバッティングを見せ、攻守でチームを支える。
「東の横綱」を下した「全員野球」
埼玉大会の7試合中、6試合に登板したエース岡部 photo by HISATOこの記事に関連する写真を見る バッテリーは寮も同室で、ピッチングについて何度も話し合い、意志を確かめあったという。岡部は気遣いから首を振らずに投げていた時期もあったが、江口は「投げたい球を投げろ」と首を振るように促した。
1回戦から投げた疲労もあったはずだが、決勝での岡部は丁寧に四隅を突き、浦和学院打線に芯を捉えさせない。わずか4安打に抑えるピッチングは、まさに岡部の真骨頂だったと言えるだろう。
ベンチ外の選手たちがデータを集め、打者ごとの分析をしてきたことも功を奏した。「こちらも4、5点とらなければ勝てない」と見ていた浦和学院の打線を「点」に分断した。守部長も「正直1-0で終わったことにはびっくりしました。でも今大会で、一番成長したのはやはり岡部です」と話す。
圧倒的なスーパースターがいるわけではない。ヒーローはその時ごとに変わる。ノーシードから勝ち上がれたのは、試合ごとに成長し、「全員野球」で一丸となれたからだ。彼らが口を揃える「全員野球」の「全員」は、グラウンドにいる選手たちだけではない。ベンチで備え、声で鼓舞する者、ベンチ外でチームのために尽力する者、マネージャーたち、応援団、指導者、OB、家族。チームに関わる人たち「全て」が、彼らの力の源だ。
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