聖望学園が浦和学院を下し、13年ぶりの甲子園へ。6年前、高橋昂也に夢を阻まれたOBが後輩たちにエール

  • HISATO●取材・文 text by HISATO

 終始変わらなかった岡部の表情が、マウンドで歓喜に弾けた。

 埼玉大会の1回戦から決勝までの7試合のうち、6試合で先発。名実ともに聖望学園のエースとしてマウンドに立ち続けた岡部大輝(3年)は、最後には脚を叩きながら、それでも集中力をきらさなかった。雨中で投じたその日の123球目は、併殺打となって一塁手のグラブに吸い込まれた。

甲子園出場が決まり、胴上げされる聖望学園の岡本幹成監督 photo by Sankei Visual甲子園出場が決まり、胴上げされる聖望学園の岡本幹成監督 photo by Sankei Visualこの記事に関連する写真を見る 埼玉大会の決勝戦、ノーシードの聖望学園がAシードの浦和学院に挑み、息詰まる投手戦を1-0で制して147チームの頂点に立った。苦しみながら勝ちとった栄光に、指揮を執り始めて37年目となる岡本幹成監督は、泣き崩れる守真基部長と抱き合った。

 春季大会では初戦敗退。そのため今大会の聖望学園には「ノーシード」の言葉がつきまとった。県内では強豪校のひとつに数えられながら、甲子園からは13年間遠ざかっている。その間、浦和学院や花咲徳栄という高い壁に跳ね返されたことも1度や2度ではない。

 前年度も2回戦で、浦和学院に11-4で8回コールド負け。その試合にも登板した岡部は「満塁ホームランを打たれたことを2週間くらい夢に見ました」と振り返る。新チームは秋ベスト4ながら春は初戦敗退。そんなどん底から這い上がった。

「悔しさをバネに」と口で言うのは簡単だ。どうすれば勝てるのか、甲子園に行けるのか。指導者も選手も、考え抜いて行き着いたのは「できることをする」ということだった。

 エースナンバーをつけた岡部は、フォームで試行錯誤を繰り返した。サイドハンドからオーバーハンド、またサイドハンド......そしてこの夏はスリークォーター。その結果、コントロールがよくスライダーが光る投手になった。リリーフで控える東山陽紀(3年)は、決勝までの6試合で1失点と抜群の安定感を見せていた。うしろは任せられる。全力で行けた。

1 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る