センバツで初のベスト4。國學院久我山の「学生コーチ」だった尾崎直輝監督の指導理念は「選手のミスは監督の責任」 (5ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Sankei Visual

 プレーするのは監督ではなく選手。尾崎監督はそのことを思い知らされたのだ。

「練習中に指導はできるけど、代わりに打席には立てない。大事なのは、僕が出したサインを選手が信じて実行できるかどうか。盗塁のサインを出したとしても、スタートの決断をするのはその選手ですから。自信を持って決断できる状況をつくるのが監督の役目なのかもしれません」

 もし試合でミスをしたら、その選手を起用した監督の責任。力を出せなかったら、指導した監督のせい。選手のミスの責任を取るのが監督の責任じゃないか――。尾崎はそう考える。

 尾崎が高校時代に裏方として走り回っていたころを知る塩見直樹(当時の助監督)は言う。

「選手としてヒリヒリした勝負を味わえなかったことは、ハンデと言えばハンデかもしれません。だけど、高校時代にやりきれなかった分、野球への思いが強い。もっともっと野球に関する知識を得よう、技術を追求しようという探求心が指導者としての彼を支えています。選手としての実績がないので『俺の言うとおりにやれ』と一方的に押しつけることがない。彼のキャリアがプラスに作用していると思います」

 尾崎の願いは、選手たちが高校を卒業してからも野球を続けることだ。

「生徒には、野球をずっと続けてほしい。僕は選手をできなくなった側の人間なんで、そう思います。硬式野球でなくても、準硬式でも軟式でも。草野球でもいい。野球は本当にすばらしいから、『草野球なんて......』と言わずに、続けてほしい」

 30代の若い監督はこれからもバーションアップを繰り返していく。次に甲子園に出た時には、これまでの失敗や敗北を糧にしてさらに大きくなっているはずだ。だが、根本にある野球への愛情、選手への思いは変わらないだろう。

■元永知宏 著
『補欠のミカタ レギュラーになれなかった甲子園監督の言葉』(徳間書店)

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