「甲子園にのまれていた」大島高校外野陣にネット上で罵詈雑言。選手は「守るのが怖くなった」

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

【短期連載】離島から甲子園出場を叶えた大島高校のキセキ 第3回

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止められなかった負の連鎖

 奄美大島には、通称「三儀山」と呼ばれる野球場(正式名称は名瀬運動公園野球場)がある。大島高校は休日になると同球場を使い、紅白戦を組む。2010年から10年間はDeNAが秋季キャンプを組んでおり、両翼100メートル、中堅122メートルの規格で、室内練習場も完備された充実した施設である。

 シートノックの最中、ノックバットを握る小林誠矢部長が大声で叫んだ。

「それじゃあ、また外野で負けるぞぉ〜!」

 3月23日のセンバツ初戦。大島は明秀学園日立に0対8で大敗した。大量失点につながったのは、大島外野陣の拙守だった。記録に残るエラーから記録上はヒットになった判断ミスまで、負の連鎖は続いた。レフトで先発出場した青木蓮は「甲子園にのまれていた」と振り返る。

春のセンバツ以降、守るのが怖くなったと語る大島高校の青木蓮春のセンバツ以降、守るのが怖くなったと語る大島高校の青木蓮この記事に関連する写真を見る 2回裏、二死満塁の場面。明秀学園日立の2番打者・平野太智が放った打球は、レフト上空に高々と上がった。だが、レフトの青木は直前に左中間のフライを捕り損ねていたこともあり、平常心ではいられなかった。

「ボールがバットに当たって、銀傘の上にいってから空と重なって見えなくなって......」

 センターの中優斗(あたり・ゆうと)は「前!」と大声を出したが、三塁側アルプススタンドから沸きあがった大歓声にかき消された。青木は後ずさりしたあとにようやく打球の位置を把握。急いで前進したものの、打球はレフト前の芝生にポトリと落ちた。この回、大島は3点を失い、大きなビハインドを負った。

 青木は強い責任を感じていた。

「大島の失点は全部、流れのなかでのものでした。自分が捕っていれば、競った展開になっていたはずなので」

 続く3回裏にはライトの直江朝日が目測を誤り、フライを捕球できない(記録は二塁打)。このプレーで1点を奪われ、大島のビハインドは広がった。直江もまた、「ミスしてしまって点差を広げてしまった」と悔やんだ。

 甲子園から奄美大島に帰ると、多くの島民が甲子園での奮闘をねぎらってくれた。ミスをした外野陣には、温かいなぐさめの声が送られた。

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