「東大は何のために六大学にいるんだ」、野球部主将・松岡泰希が出した答えは"勝つため"。「勝たなかったら存在に意味はない」 (5ページ目)

  • 宮部保範●取材・文 text by Miyabe Yasunori

「勝負の世界に自分の身を置いていたい」

ーーでは、学生最後のシーズンに臨むなかで、主将として目標としていることを聞かせてください。

松岡 目標は、最下位脱出。リーグで2連勝を2回することです。

ーーやはりチームとして勝ちにいくのが主将の責務だと。松岡選手自身は、2塁送球タイムがとりざたされていたり、捕手としての能力が注目されています。卒業後、どのような進路を目指すのでしょうか?

松岡
 上で野球をやりたい気持ちあるんですよね。そうは言っても、今の僕のレベルでプロにいけると思っていないので、まずはよりプロに近い社会人野球で経験を積みたい。そこでプロ野球の道を拓けるならば、いってみたいです。ただ、今はそこまで考えてないんです。目の前のことを一番に考えています。僕の根本には、楽しければいいというのがあって、あまり先のことは考えられないと思っています。とにかく、まずは東大を少しでも多く勝たせるってことですね。

ーーあえてうかがいます。野球に限らず、東大を卒業して、本格的な社会人チームやプロで競技を続ける選手というのはなかなかいないと思うんですよ。それでも、さらに上のレベルで野球をやってみたいという気持ちは、どこから来るんですか?

松岡
 自分自身の力を試したい、自分がどこまでできるのかを試したいって気持ちがあります。僕が野球をやってる根源というか、なんで自分がやっているのかを考えたとします。もちろん自分が打ったとか、盗塁を刺してうれしいというのはあるんです。ただ正直、別に自分のことはどうでもいいんです。勝つために試合へ向けて頑張ったのが楽しいってわけでもないんです。とにかく、勝ち負けが楽しくて、勝負の世界に自分の身を置いていたいというのがあるだけなんです。

ーー勝つか負けるかが楽しいと。

松岡 その意味で社会人の都市対抗野球はトーナメントなので惹かれますね。一回負けたら終わっちゃうっていう。勝たなきゃいけないというのが、僕の野球をやっている根源で、野球が好きな理由なので。まだまだ勝負したいと思っています。

* * *

 2022年、東京六大学野球で東大野球部は何かを起こせるだろうか。真っすぐな視線で勝負にこだわる松岡選手が率いるチームに可能性を感じざるを得ない。

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写真提供/東京大学野球部

<profile>
松岡泰希 まつおか・たいき 
2000年、神奈川県横浜市生まれ。小学3年の時に野球を始め、小学6年から捕手。中高一貫の東京都市大学附属を経て、東京大学文科3類に現役合格。東大野球部では、1年春に神宮デビューを果たし、今季は主将としてチームを引っ張る。2塁送球1秒85の強肩で、プロのスカウトからも注目を集めている。

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