「東大は何のために六大学にいるんだ」、野球部主将・松岡泰希が出した答えは"勝つため"。「勝たなかったら存在に意味はない」 (4ページ目)

  • 宮部保範●取材・文 text by Miyabe Yasunori

ーー体の動き一つひとつから、野球の技術をつくり上げているということでしょうか?

松岡 東大の野球でまず特徴的なのは、走塁や盗塁技術に象徴されるような、細かいプレーも含めて、体の使い方を極めようとしているところです。どこの筋肉を、どう動かせばいいのかという意識を持って、その動きをするためにはどういったトレーニングをするのがいいのか、解剖学的なところまで探っています。

ーー東大野球部へのイメージが少しずつ湧いてきたような気がします。

松岡
 やっぱり基礎的な技術は必要ですし、結局どういうふうな攻めをしようとしているかわかっていても、相手の145kmの真っすぐを打ち返せないことには始まらない。それを打ち返せるだけの体力だったり、技術は身につけなきゃいけないんです。

ーー相手を攻略する戦術が見えていても、選手の体力や技術が足りなければ描いたイメージを実践できないですよね。機能的な体の使い方や鍛え方の話がありましたが、戦術や技術的なところに東大としての特徴はあるのでしょうか?

松岡
 どこのチームでもしているとは思いますが、相手ピッチャーの傾向の分析は細かくしているので、そのデータをもとに作戦を立てます。なかでも、うちの特色は走塁プレーで相手をかき乱していくもので、データを読み解いてギリギリまでリードを取ったり、本当に細かいことですが、ひとつずつ勝ちへの材料を積み上げていく感じです。

学生アナリストが相手チームを細かく分析

ーーイメージで申し訳ないですが、東大というと研究や分析をする作業が他大学とは別次元なのではと思う反面、プロ野球やメジャーリーグのそれと比べた時の東大の独自性はどこにあるのかとも気になります。

松岡
 チームの特色としては、学生のコーチやアナリストが専任でデータ分析をしているところですかね。2019年秋季リーグから神宮球場で弾道測定器の「トラックマン」を使えるようになり、それから六大学でもデータ解析を積極的にやっていこうという流れになっていますが、東大では、他大学に先駆けてトラックマンを導入していてアドバンテージはあると思います。去年のチームで、学生コーチをしながらアナリストとしても貢献してくださった齋藤周さんは、卒業して今シーズン、ソフトバンクホークスとのアナリスト契約を結びました。

ーー学生コーチやアナリストとは、どういった方たちなのでしょうか?

松岡 今、東大野球部には学生コーチが5人とアナリストが1人いるんですが、みんな大学生です。学生コーチ兼アナリストとして齋藤さんのやっていたことを、今年は独立したアナリスト部門をつくって募集をかけ、1人が入部してくれました。

ーーアナリストをコーチから独立させる必要性があったんですか?

松岡 東大ではトラックマンの他に、ラプソードという測定器も取り入れていまして、バッティング用とピッチング用があります。ボールの回転数や速度、打球角度それに自由落下の時に描く放物線に対する変化量などを測るものです。測定データは細かい数値で膨大な量になるので、専任のアナリストが必要だと考えました。

ーー専門アナリストに志願してきた学生となると、データを読み解く力も違うものですか?

松岡 処理能力がとても高く、試合ごとに短時間で分析してくれます。それで、「もうちょっとこうしたほうがいいですよ」とアドバイスをくれたり。僕ら選手の場合は、ただ体を動かして感じてという意見が多いので、そうじゃない客観的な視点を入れてくれると、ハッと気づくこともあります。わかりやすいように説明してくれますし、ありがたいです。アナリスト部門は、まだまだ立ち上がったばかりですが、1人目としていろいろ頑張ってくれていますし、これから発展させていきたいですね。

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