2022.04.13

「矢澤ドラフト」にいよいよ現実味。アクシデントにも負けず、日体大の二刀流が見せた進化の証

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

 見るからにマウンドに立つ矢澤宏太の様子がおかしい。球速は145キロ前後が出ているものの、いかにもボールが走っていない。投げた瞬間にはっきりボール球とわかる抜け球も目立った。

 矢澤にいったい何が起きているのか。らしくないボールの数々を見て、何度も首をかしげてしまった。

投打で高い評価を受ける日体大・矢澤宏太投打で高い評価を受ける日体大・矢澤宏太 この記事に関連する写真を見る  日本体育大の矢澤は現時点で2022年のドラフト戦線で最注目の存在だ。投手としては速球も変化球もずば抜けたキレを誇るサウスポー。野手としても走攻守に一級品の才能を持ったオールラウンダー。「投手としても野手としてもドラフト1位クラスの評価を受けたい」。それが矢澤の描く野望である。

7四球も粘りの投球

 下級生時は野手としての能力が際立っていた。だが、上級生になるにつれ、投手として急成長。今やスカウト陣に「投手か? 野手か?」と悩ませる実力を身につけ、プロでの「二刀流」も現実味を帯びている。

 ところが、今春リーグ2度目の登板となった4月9日の東海大戦。「4番・投手」で先発出場した矢澤は、明らかにマウンドで苦しんでいた。この日、初めて矢澤を見た人がいたら、7個もの四球を乱発する姿に物足りなさを覚えたに違いない。

 試合後の会見で、矢澤は左手の人差し指と薬指にマメができ、思うような投球ができない一因になったことを明かした。

「気づいたら指先にマメができていて、ぷっくりふくらんでいたんです。最初からあまり力が入らなくて、ずっと指先が変な感じのまま投げていました」

 しかも、相手は首都大学リーグを代表する名門・東海大である。優勝争いをするうえで絶対に負けられないプレッシャーものしかかる。投手としても打者としても主力の矢澤は、その責任を一身に背負っている。

 だが、矢澤は出塁こそ許すものの、粘りの投球を見せた。とくに効果的だったのは、タテに大きく落ちるスライダー。ヒザ元にこの球が決まると、東海大の右打者はグリップで腹を切るような窮屈なスイングで凡打を重ねた。スライダーについて、矢澤は「力が入らないのが逆によかったのかも」と振り返る。