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「矢澤ドラフト」にいよいよ現実味。アクシデントにも負けず、日体大の二刀流が見せた進化の証 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text & photo by Kikuchi Takahiro

 悪いなりに抑える。それは矢澤の大きな進化を物語っていた。いい時はいいが、悪い時はとことん悪いのが「投手・矢澤」の高校時代からの課題だった。日本体育大の辻孟彦コーチは、矢澤の高校時代についてこう語っていたことがある。

「僕は矢澤が高卒でドラフトにかかるものとばかり思っていたんですけど、最初に見に行った試合は荒れ放題でした。フォアボールはイニング数以上に出していましたし、点も結構とられていて。その代わりバッティングはホームランを2本も打っていて、最初は『バッティングのほうがいいかな』という印象すらありました」

 そんな不安定さが評価を落としたのか、高校時代の矢澤はプロ志望届を提出しながら指名漏れの憂き目にあっている。日本体育大進学後は辻コーチと二人三脚で体づくりに取り組み、リーグ戦期間でも先を見据えて厳しいトレーニングを続行。小手先に走ることなく、じっくりと実力を養成してきた。

打者としても見せ場

 そして大学最終学年を迎え、矢澤はまたひとつ脱皮しようとしている。7回までに136球もの球数を要し、2失点(自責点1)とまとめた投球について、矢澤はこんな実感を語った。

「悪いなりに、右バッターにも左バッターにも大事なところでインコースに投げきれたのがよかったと思います」

 打者・矢澤としても、この日は見せ場をつくった。1打席目はファーストゴロに倒れ、開幕節の2試合で記録した7打数連続安打の記録は途絶えた。だが、この凡退で「ラクになった」という矢澤は、次の打席でセンター前へポトリと落とす2点適時打を放つ。さらに50メートル走5秒80(光電管測定)の快足を飛ばして二塁を陥れた。

 7回で降板したあとはライトのポジションに回り、2対2の同点で迎えた8回裏には決勝点となる押し出し死球を受けた。

「自分が決めてやると思いながら打席に入ったんですけど、踏み込み気味にいった右脛に当たってラッキーでした」

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