大阪桐蔭・西谷監督が語った王者の宿命「甲子園で優勝しないとおめでとうと言ってもらえない」 (3ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Taguchi Yukihito

鳴門の好左腕にどう挑むか

 今年に入って、唯一、練習試合が観戦できた3月7日の関西学院戦(ダブルヘッダー)。プレーボール前から大阪桐蔭の選手たちからやる気がみなぎり、スパイクの刃が土を噛む音からも気合いが伝わってきた。

 大勝で終わった第1試合のあと、西谷監督がセンバツへ向けて意気込みを語った。

「とにかく今は、初戦のことで頭がいっぱいです。周りからは、決勝までいけば8日間で5試合のことを言われますけど、8日間を考えて戦えるほど甲子園は甘くありません。日本一になることを強く(心に)持ちながら、とにかく初戦をどうやって勝つか。去年のセンバツは初戦で負けてますから、そこに全力で向かっていきたい」

 初戦から厳しい戦いになることは十分予想される。大阪桐蔭打線は伝統的に左腕に苦しむ傾向がある。鳴門の左腕エース・冨田遼弥は秋の公式戦で42イニングを投げ、防御率0.86。イニング数を上回る45個の三振を奪い、四国大会準決勝では明徳義塾(高知)を延長11回、2失点、13奪三振の快投を演じた。注目の左腕・冨田に対してどんな戦いをするのか注目である。

 ここを勝ち抜けば、過密日程になるが、大阪桐蔭にとってはマイナスにならないのではないかと思う。過去出場した甲子園での戦いを見ても、ベスト8以上は12回あり、うち8回は優勝。ちなみに、決勝には8回進んでおり、一度も負けていない。勝ち上がるほど負けなくなる。消耗戦でこそ底力を発揮するのも大阪桐蔭の伝統である。

 とはいえ、まずは初戦だ。3大会連続で大会序盤に姿を消すわけにはいなかい。

「まずは初戦に全力で入って、しっかり勝って乗っていきたい。この春、入部してくる1年生が大阪桐蔭野球部の40期生なんです。1年1年、歴史が積み重なってきたことに感慨深いものがあります。この節目の年に、去年の先輩たちが甲子園で勝てなかった分を取り返す。そんな大会になればいいなと思っています」

 勝ちきることでしか満たされない王者が、満を持しての登場となる。甲子園の借りは甲子園で。大阪桐蔭の初戦は大注目である。

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