大阪桐蔭・西谷監督が語った王者の宿命「甲子園で優勝しないとおめでとうと言ってもらえない」

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Taguchi Yukihito

 選抜高校野球大会(センバツ)は、6日目の第1試合で出場32校が出揃う。その最後、鳴門(徳島)との一戦に挑むのが2年連続出場の大阪桐蔭だ。今年の春は、13度目で初めて神宮王者としての出場となる。

 昨年秋は大阪大会、近畿大会、神宮大会と公式戦15試合を全勝での完全優勝。しかも15試合中10試合がコールド勝ちで、チーム打率は4割を超え、本塁打も15試合で17本。投手陣も、秋の主役となった新2年生の前田悠伍を筆頭に、昨年甲子園を経験している別所孝亮、川原嗣貴(ともに新3年)の本格派も揃う。

 個々の能力はもちろん、これだけの結果を残せばメディアの評価は当然こうなる。「優勝候補筆頭」「大本命」──。

甲子園通算56勝の大阪桐蔭・西谷浩一監督甲子園通算56勝の大阪桐蔭・西谷浩一監督この記事に関連する写真を見る

逆風のなかでのスタート

 今年1月、そんな話題を西谷浩一監督に向けると「勘弁してください。みんな簡単に言ってくれますけど、打つも守るもまだまだですから」と泣きの表情をつくったが、狙うは日本一。これはいつもと変わらぬことで、今年のチームに対して自信を示すものではない。

「中田(翔/現・巨人)からいるから、藤浪(晋太郎/現・阪神)がいるから日本一を狙うということではなく、戦力的に厳しいと見られている年でも、なんとか粘って、最後にスキを突いて日本一までいけないかと、いつもそこを目指しています。だから今年も実力的にはまだまだですけど、もちろん目標は日本一。そこは変わらないということです」

 中田がいても、藤浪がいても、根尾昂(現・中日)や藤原恭大(現・ロッテ)が揃っていた時でさえ、西谷監督は「まだまだ」と繰り返していたのだから、口癖であるこの言葉の頻度が多くなるのは当然のことである。

 正直、昨年秋に新チームがスタートした時点で、この姿は想像できなかった。

 昨年の大阪桐蔭は、春夏連続で甲子園出場を果たすも、センバツでは智辯学園(奈良)に初戦敗退。夏も2回戦で近江(滋賀)に敗れた。大会序盤に、しかも同じ近畿勢に敗れるなど、大阪桐蔭らしかぬ戦いが続いた。さらに言えば、2020年夏も独自大会ではあったが、夏の直接対決で11連勝中だった履正社に21年ぶりの敗戦。近年の戦いに"負の流れ"があったのはたしかだった。

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