京都国際の秘密兵器がいきなり輝き。劣悪グラウンドで鍛えられた超絶守備は必見 (2ページ目)
とはいえ、小牧監督の野球は二遊間の守備力を重視する。生半可な実力では、内野陣の重要ポジションは任せられない。小牧監督が舌を巻いたのは、技術以前に武田の強心臓ぶりである。
「ビビらずに向かっていける子なので。もう彼にかけました」
本来なら「付け焼き刃」のはずだったが、京都国際ならではの環境もその刃を強固にした。武田は笑顔でこう語る。
「ウチのグラウンドはガタガタなので。イレギュラーや難しいバウンドへの対応はうまくなったと思います。それに比べて甲子園の土は軽くて、ボールが滑ってくる感じだったのでとても守りやすかったです」
上野響平が在学した2年前、京都国際のグラウンドを訪ねたことがある。グラウンドは小学校の校庭のような砂利混じりで、時には駐車スペースにもなるため車の轍(わだち)も残っていた。
そんな足場の悪い状況にもかかわらず、上野はまるで曲芸師のように軽やかにゴロをさばいていた。昨夏から黒土が入ったというが、足場の悪さは健在。劣悪なグラウンドコンディションは、間違いなく京都国際に名手が育つ一因になっている。
柴田戦の延長10回裏、1点差に迫られさらに二死一、二塁の場面で遊撃手の武田のもとへ打球が飛んできた。緊迫した状況に体が固まっても不思議ではない場面、わずかにイレギュラーしたバウンドを武田は何事もなかったような風情でさばいた。
小牧監督はこの場面を勝利のポイントに挙げている。
「こちらはミスばかりで完璧な負け試合だったんですけど、最後にああいう厳しい場面で武田がしっかり捕って、投げて処理してくれた。あれは大きかったですね」
今後も武田を遊撃手として育成していくつもりなのかを尋ねると、小牧監督は力強くうなずいた。
「身体能力の高い選手ですし、打球に攻めていける選手なのでショートとして大きく育てていこうと考えています。まだまだショートとしては素人なので、細かな駆け引きを覚えるのはこれからですね。ヒザを柔らかく使うこと、ダッシュ力を身につけることがポイントになるでしょう。それはバッティングにも生きてきますし、彼が長く野球を続けていくうえで必要な要素ですから」
もはや秘密兵器ではなく、注目選手の仲間入りを果たしたと言っていいだろう。武田侑大が次に登場するのは、本日、3月27日(第2試合)の東海大菅生(東京)戦である。
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