京都国際の秘密兵器がいきなり輝き。劣悪グラウンドで鍛えられた超絶守備は必見

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

『特集:球春到来! センバツ開幕』

 3月19日、2年ぶりとなるセンバツ大会が開幕した。スポルティーバでは注目選手や話題のチームをはじめ、紫紺の優勝旗をかけた32校による甲子園での熱戦をリポート。スポルティーバ独自の視点で球児たちの活躍をお伝えする。

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"秘密兵器"がヴェールを脱いだ。

 昨秋の公式戦出場は0。にもかかわらず、公式戦初出場となる春のセンバツでいきなり1番・遊撃手に抜擢。京都国際の新2年生・武田侑大(ゆうと)は重要なポストで起用され、そして輝きを放った。

軽快な動きを見せる京都国際の2年生遊撃手・武田侑大軽快な動きを見せる京都国際の2年生遊撃手・武田侑大 3月24日の柴田(宮城)との初戦。武田は打っては一時逆転となる3点タイムリー三塁打を放ち、守っては安定した守備を披露した。試合は延長10回の末、5対4で京都国際がものにした。

 甲子園球場に韓国語の歌詞の校歌が流れたことばかりがクローズアップされた京都国際だったが、この新鋭遊撃手の登場もセンセーショナルだった。

 武田は試合後、充実した表情で高校初めての公式戦を振り返っている。

「シートノックが始まるまでは緊張していたんですけど、ノックが始まって全員で声出しをしてからは、緊張がほぐれました」

 とくに遊撃守備は見事だった。荒れた足場をものともせず、どんなバウンドに対しても落ち着いて対処する。決して派手さはないものの、ミスをしない。

 さすがは曽根海成(広島)、上野響平(日本ハム)と好守の遊撃手を育成してきた京都国際。しかも、驚くことに武田は遊撃手に転向してまだ日が浅いのだ。

 中学時代は捕手だった。遊撃手になったのは、昨秋の欠場要因になった右足すね痛が癒えた1年秋以降。コンバートを指示した小牧憲継監督は「正直言って、はじめは『かませ犬』のつもりでした」と明かす。武田の打力は買っていたものの、守備力は未知数。昨秋は不安定だった遊撃手争いの刺激になればと考えた。

 ところが、「ショート・武田」は意外にもフィットした。小牧監督は続ける。

「実戦で使っていくなかで一番結果を出して、ミスがなかったのが武田だったんです」

 武田自身、ショートにフィットした要因をこのように考えている。

「中学の時はキャッチャーをやっていたので、配球や打球が飛ぶ方向はわかりやすいので、ポジショニングには自信があります」

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