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元プロコーチもホレた天性の逸材。21世紀枠の快腕がいよいよ甲子園デビュー (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 だが、好事魔多し。2月の寒い時期に全力投球した中村は、左肩を痛めてしまう。その後は痛み止めの注射を打ちながらプレーしたが、肩の痛みは大学2年まで引かなかった。中村の根底には「後輩には同じ轍は踏ませたくない」という思いがある。

「ケガをしないフォーム=いいフォームだから、と選手には口酸っぱくして言っています。とくにピッチャーはケガをしないためのトレーニング、フォームづくりをしていこうと」

 辛抱強く指導にあたった結果、福島は2年秋時点で最速143キロを計測する、東北地方きっての好素材になった。相変わらず股関節は硬いものの、角度のある投球に加え試合をまとめる投球術も進歩している。

 秋の県大会で準優勝を果たし、東北大会では1勝を挙げてベスト8に進出。準々決勝では岩手の強豪・花巻東を相手に福島が快投を見せる。バックの拙守から序盤に2点を失ったものの、失点はそれだけ。試合は1対2で惜敗した。

 善戦と言っていい内容に見えるが、中村の見方は厳しい。

「花巻東はああいう内容でも勝ち切れるからこそ、全国でも勝てるチームだと思うんです。踏ん張り負けたことで、ウチには地力がまだないと思い知らされました。勝てないのは、弱い証拠です」

 後輩たちならもっとやれる、という期待の裏返しでもある。大黒柱の福島だけでなく、主砲の廣田大和も中村は「投手として蓮と同じくらいのポテンシャルがある」と太鼓判を押す。

 東北大会ベスト8に食い込んだ実績などが評価され、八戸西は今春の選抜高校野球大会(センバツ)に21世紀枠で選出された。

 母校初の甲子園出場が決まった瞬間、校長室で監督の小川らと吉報を待っていた中村は身震いするほどの興奮を覚えた。だが、喜びの感情が湧いたのはほんのつかの間だった。

「すぐに『甲子園で戦えるのかな......』と、コーチとしての恐怖感がどっと押し寄せてきました」

 高校2度目の冬を迎えた福島は、少しずつウエイトトレーニングを始めている。身長はまだ伸び続けており、現在は189センチ。中村は「まだ骨端線は閉じていないようなので、最終的に191~193センチくらいまで伸びるんじゃないですか」と見通しを語る。

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