2021.03.20

スーパー中学生から甲子園のスターへ。仙台育英・伊藤樹「全集中」の投球

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

『特集:球春到来! センバツ開幕』

 3月19日、2年ぶりとなるセンバツ大会が開幕した。スポルティーバでは注目選手や話題のチームをはじめ、紫紺の優勝旗をかけた32校による甲子園での熱戦をリポート。スポルティーバ独自の視点で球児たちの活躍をお伝えする。

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── 須江監督がずっと求めてきた伊藤投手の姿に、ようやく近づきつつあるのではないですか?

 試合後のリモート会見で仙台育英・須江航(わたる)監督に尋ねると、実感のこもった「そうですね」という相槌の後、こんな答えが返ってきた。

「『スーパー中学生』と言われても、体の成長の早さもありますし順風満帆にいく選手なんていないと思うんです。必ず行き詰まる時がくる。彼は一度挫折を経て、自分で考えて、考え抜いてこのレベルまで登ってきた。野球選手として尊敬します。チームにとって、彼は完全な背番号1。今日投げなかった投手たちにも、いい刺激を与えてくれたと思います」

明徳義塾戦で好投した仙台育英のエース・伊藤樹 3月19日に開幕した選抜高校野球大会(センバツ)。初戦屈指の好カードだった仙台育英(宮城)と明徳義塾(高知)の一戦は、仙台育英が1対0で投手戦を制した。

 勝利の立役者になったのは、5回1/3を投げてノーヒットリリーフした伊藤樹(たつき)である。

 伊藤は仙台育英秀光中に所属した中学時代、全国中学校軟式野球大会(全中)で準優勝に輝いている。全中決勝で投げ合ったのは、中学3年にして最速150キロをマークした高知中・森木大智(現・高知高)。伊藤も中学3年にして最速144キロを投げ、多彩な変化球を操る完成度の高い右腕として注目を集めた。そして、森木らとともに「スーパー中学生」と呼ばれた。

 だが、仙台育英に進学後の伊藤は、華々しい成績を残していたわけではない。

 1年夏の甲子園では試練を味わっている。星稜との準々決勝で先発に抜擢されるも、1回1/3で5失点と早々にノックアウトされた。チームは1対17と大惨敗を喫した。

 1年秋は右肩のコンディションが悪く、不振に苦しんだこともあって明治神宮大会ではベンチから外された。軟式球と硬式球の微妙な質感の違いに戸惑い、中学時代は打者をきりきり舞いさせていたスプリットが思うように落ちなくなってもいた。