スーパー中学生から甲子園のスターへ。仙台育英・伊藤樹「全集中」の投球 (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 古川にタイミングが合っていた明徳義塾の6番・代木大和を、伊藤は外角にコントロールされた145キロのストレートで空振り三振に仕留める。以降は先頭打者を一人も出塁させず、試合巧者の明徳義塾に主導権を渡さなかった。

「補欠監督」だからできた仙台育英の大改革>>

 最後に須江監督に聞いてみた。「今日の伊藤にあえて注文をつけるとしたら、どんなところでしょうか?」と。須江監督は、こう答えた。

「8回に先頭の9番打者に三振を取りにいったシーンがありました(カウント2ストライクから3球連続ボールのあと、辛くも三塁ゴロに打ち取る)。こういうゲームを動かすのはフォアボール。一つのフォアボールが命取りになる可能性があるわけです。伊藤にはそんな視点を持って投げてもらいたいですね」

 指揮官の言葉を同じ会見場にいた伊藤はしっかりと聞いていたようだ。報道陣から「今日の反省点」を聞かれると、真っ先にそのシーンを挙げた。

「ボルテージが上がってしまって、キャッチャーのサインに首を振って投げたい球を投げたんですけど、決め切れませんでした。力みが出てしまいました」

 次戦は3月24日(大会6日目)に神戸国際大付と戦う予定だ。仙台育英はこの日投げた伊藤と古川以外にも、昨秋の公式戦で活躍した速球派右腕・松田隆之介もいる。機動力を生かした戦いぶりには、スキが見当たらない。

 エースの名にふさわしい実力を手に入れたこの春、伊藤は甲子園のスターへの道を進もうとしている。

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