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元プロコーチもホレた天性の逸材。21世紀枠の快腕がいよいよ甲子園デビュー

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

『特集:球春到来! センバツ開幕』

 3月19日、2年ぶりとなるセンバツ大会が開幕した。スポルティーバでは注目選手や話題のチームをはじめ、紫紺の優勝旗をかけた32校による甲子園での熱戦をリポート。スポルティーバ独自の視点で球児たちの活躍をお伝えする。

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「肩周りの柔軟性は天性のものだな......」

 入学したばかりの1年生右腕・福島蓮の腕の振りを見て、投手コーチの中村渉(わたる)はその素質に一目惚れした。噂には聞いていたが、実際に見てみると想像以上の大器だった。そしてすぐ、中村はこう考えた。

「最初の1年間は試合で投げさせないくらいの育成プランを立てよう」

189センチの長身から投げ下ろす最速143キロの速球が武器の八戸西・福島蓮189センチの長身から投げ下ろす最速143キロの速球が武器の八戸西・福島蓮 選手層の厚い強豪校ではない。青森県立八戸西高校。2016年春には大型右腕・竹本祐英(駒澤大→JR東日本東北入社予定)を擁して県大会優勝を飾ったこともあるが、甲子園出場経験のない公立高校である。

 中村は2017年晩秋に母校のコーチになった。4学年後輩の小川貴史が監督に就任することになり、中村にコーチ就任を依頼したのだ。

 中村は当時の経緯をこのように語る。

「行きつけのスポーツショップで小川と偶然会った時に『甲子園に行きたいので、ピッチャーを教えてくれませんか?』と言われたんです。僕もすでに資格回復していましたし、いずれは教えたいなと思っていたので」

 中村の言う「資格回復」とは、学生野球資格回復研修制度のこと。中村はかつて日本ハムでプレーした、元プロ野球選手なのだ。

 といっても、2005年から3年間の在籍で一軍登板0という、実績のない左投手だった。野球選手として目立ったのは、入団前に実家の畳店で働きながらクラブチームでプレーした異色の経歴がクローズアップされたことくらいだ。

 現役引退後は会社員を経て、創業220年の老舗・中村畳工店の8代目として精力的に働いている。

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