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天理高・中村良二監督は元近鉄の苦労人。反面教師は「現役時代の自分」 (5ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Sankei Visual

【一丸となって戦わないと勝てない】

 プロ野球で挫折したのち、少年野球、社会人チームやクラブチーム、大学野球を経て高校野球のコーチ、監督になった中村は、これまでの体験を教材としながら指導を行なっている。

 監督に就任した2015年の秋から、ベンチ入りメンバーを選手による投票で選ぶようにしているが、それは「天理での出会いを大切にしてほしい」との思いがあるからだ。

「春、夏、秋と3つの大きな大会がありますが、全部、生徒に決めさせています。『自分が思う、天理のベストメンバーを選んで』と言って、記名式で、20人のメンバーを自分が監督になったつもりで選ばせるんです。実力的に20人に入れられないけどベンチに入れたい、という人がいれば、ふたりまでは欄外に書いてもいいと」

 その投票を見て、監督やコーチが驚くことがある。

「実力的には少し劣るけど、ときどき、欄外にものすごい票を取る子がいるんです」

 監督やコーチがいないところで何をするか。それを見ているのが仲間だ。

「僕らが見ているから頑張るんじゃなくて、同級生や先輩・後輩と一緒に野球をして、自分でベンチ入りやレギュラーを勝ち取りなさいという話をします。それが、彼らにとっての出会いですよね。それを、大事にしなさいと伝えています。

僕らが想定していなかった子がメンバーに入っているのを見ると、うれしくなります。『そうか、そういうことか』と。大人の目では見えないものがあるんですね」

 選手間の投票によって選ばれるメンバーには、それだけの責任がある。

「投票された選手はその責任を感じてベンチに入って試合に臨んでほしいし、ベンチに入れなかった選手も、投票した責任があるからしっかりサポートしてほしい。『一丸になって戦わないと、うちは絶対に勝てないよ』といつも言っています。まとまって、ひとかたまりで立ち向かっていかないと」

 今回の春のセンバツ1回戦(3月20日)で、天理は宮崎商業と対戦する。ベンチ入りの18人がすべての部員の思いを背負って、甲子園で暴れ回るはずだ。

■元永知宏 著
『補欠のミカタ レギュラーになれなかった甲子園監督の言葉』(徳間書店)
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