2020.12.10

無名公立の山田高校が甲子園に迫る。
80歳「おばちゃん」の教え子も

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro

 コロナによる落ち着かない空気が漂い続けるなか、高校野球界では来春の選抜大会の開催へ向けた動きが一歩一歩進んでいる。12月11日には21世紀枠の候補校が地区推薦の9校に絞られ、年が明けた1月29日、一般選考と合わせて21世紀枠の3校も決定する。

 すでに北海道を除く都府県で21世紀枠に推薦された46校の顔ぶれを眺めてみると、改めて大阪の秋を沸かせた山田高校に目が留まる。"私学絶対優位"の大阪の地で、公立ながら秋の府大会では甲子園出場経験を持つ私学4校を倒し、3位決定戦では前年夏の日本一、あの履正社を破る大金星。直後のツイッターでは「山田高校」「大阪の公立」などの関連ワードがトレンド入りするなど、瞬く間に山田の名が全国を駆けめぐり、26年ぶりの近畿大会出場も果たした。

サッカー部と隣り合わせで練習する山田高校のグラウンド(写真=共同通信)サッカー部と隣り合わせで練習する山田高校のグラウンド(写真=共同通信)

 全員が近隣の小、中学校の出身で、一般受験で普通に集まった子供たちが見せた快進撃。このニュースには、地元の野球関係者も大いに盛り上がっている。長年、山田高校の地元である吹田市山田で野球小僧たちの育成に力を注いできた棚原安子(たなはら やすこ)さんもその一人だ。

 棚原さんは、夫の長一さんと学童野球チーム「山田西リトルウルフ」を立ち上げて50年。子供からも父兄からも「おばちゃん」の呼び名で親しまれ、80歳となった今もグラウンドで気合いのこもった声を飛ばしながら、ノックを打つ。子供たちへの指導経験をもとに書いた本『親がやったら、あかん!』(集英社)を出版し、子育ての達人としてメディアに取り上げられることも多い。

 そんな"奇跡の80歳"も地元校が起こした秋の奇跡を喜んでいる。

「大阪は何と言っても高校の数が多いうえ、大阪桐蔭、履正社をトップに私学が絶対的に強い。そのなかで、ホントに快挙も快挙ですよ。ウルフ出身の子も4人、頑張ってくれていますけど、山田高校は地元の子供たちが集まったチームなので、ウチだけじゃなく地域の少年野球の指導者たちもみんな喜んでいます。

 実は履正社の多田晃コーチもウチの卒業生で、3位決定戦で敗れた夜、家を訪ねてきて、『おばちゃん、山田にやられました......』と。どっちにもOBがいて複雑なところもありましたけど、履正社にはまた次に頑張ってもらって......」