2021ドラフトの主役となるか。近畿で輝いている4人の大物投手たち (2ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Sankei Visual

「テンポよく投げて守備のリズムをよくして、そのなかで丁寧さも忘れないように。バッターにボールを絞らせない、迷わすことを考えています」

 力みがなく、クセのないフォームは一見すると野手がマウンドに上がりテンポよく投げているような雰囲気があり、そこに凄みは感じない。しかし、そのピッチングは勝てる投手としての要素が詰まっている。

 最速150キロを誇る大阪桐蔭の松浦慶斗もある意味、イメージどおりではないサウスポーといえる。186センチ、91キロの堂々たる体軀を見てまず頭に浮かんだのが、大阪桐蔭の大先輩・辻内崇伸(元巨人)だ。高校時代の辻内のように、スピードボールで圧倒するピッチングをイメージしたくなるが、現状はそうではない。

 先発したが、試合展開により2回で交代した近畿大会初戦の長田(兵庫)戦。試合後の取材で、松浦はこの日投げた28球すべてがストレートだったと言った。ただ、ネット裏から見ていると「今のボールは何?」と頭をひねる球がいくつかあった。

 その正体は、いわゆる"汚い回転のストレート"。夏の大阪独自大会でも130キロ前後から150キロまでストレートの球速帯に幅があったが、この日もそうだった。現時点ではこれが松浦の持ち味となっており、そのあたりは本人も自覚している。

「中学時代も125キロくらいから130キロ台後半まで、普通に混ざって投げていました。自分では取り球(ストライクを取りにいく球)の時は意識的に抜く時もありますけど、基本的には同じ腕の振りで投げています。それでも球速差が出たり、ボールの回転にばらつきが出ます。(捕手の)田近(介人)からは『ムーバー』って言われています」

 一方で、指にかかった時のストレートは一級品であることは、この夏すでに証明済みだ。独自大会準決勝の履正社戦。6点ビハインドの6回二死満塁で小深田大地(DeNA4位指名)と対戦した時のボールは圧巻だった。一打出ればコールド負けの場面で、その日4安打の小深田をオールストレートの6球勝負で空振り三振。

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