空タッチに「アウト」で猛抗議。主将が目にしたグラウンド内外の混乱 (4ページ目)
1980年の埼玉県予選を制した熊谷商 photo by Sankei Visual むしろ収まらなかったのは、スタンドの熱狂的なファンだった。不満を顕にしたファンが収まるまで、審判員はしばらく球場から出られなかったという。
当時の審判員の消息を調べたところ、関係者によると二塁塁審はその後すぐ、高校野球の審判から身を引き、現在は亡くなっているという。存命の2名に取材を申し込んだが、「昔のことでもう『アウト』で終わったこと」「(二塁塁審が)亡くなられているし、話したくない」と断られてしまった。
ある高校野球審判員は、その心境をこうおもんばかる。
「決勝戦の審判を務めるということは、独特の緊張感のなかでジャッジをしなければいけないということ。その難しさは裁いた本人にしかわからないでしょう」
40年後の今、国府田さんは川口工業野球部OB会「ひょうたん会」の会長を務めている。「ひょうたん会」の名称は、大脇監督の口癖だった「締めるところは締まれ」に由来するそうだ。
野球部に絡む会合に出席するたび、国府田さんは奇妙な視線を感じるという。
「後輩がこちらを見て、『あれやばいよね』って言っている声がチラホラと聞こえてきます。保護者のお父さん、お母さんも動画を見ているようですね」
低迷する母校に歯がゆさを覚えることはある。だが、現場で奮闘する選手、指導者の姿を見ると、ただただ応援したい思いが湧いてくるという。
「12月にOBチームと現役チームで試合をするんですけど、プレーを見ていると野球に対して真面目だし、とにかく野球が好きなんだなと感じます。チームの強い、弱いはありますけど、根っこの部分は僕らも今の後輩も一緒なんだな......と」
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