空タッチに「アウト」で猛抗議。主将が目にしたグラウンド内外の混乱 (2ページ目)

  • 菊地高弘●取材・文 text by Kikuchi Takahiro

 この瞬間を国府田さんは一塁側ベンチから目にしたという。

「(ショートが)完全に落としていましたから。すぐに誤審だとわかりました」

 大脇監督から「行け!」と命を受けたキャプテンの国府田さんは二塁まで走った。ただ、この時点では「あからさまに落としているのだから、抗議に行くまでもなく覆るだろう」と楽観的に考えていた。二塁に着いた国府田さんは塁審に聞いた。

「落としていますよね?」

 しかし、塁審はかたくなに「アウトだ」と言って譲らない。

 一度、ベンチに戻って大脇監督に報告した後、国府田さんは再び二塁に向かう。

「完全に落ちてますから、主審(球審)に確認してください」

 塁審にそう伝えた後、ランナーの瀬川誠さん(当時2年)に「お前はここで待ってろ」と指示を出した。

 審判4氏が集まって協議を始めたが、国府田さんの目には二塁塁審の口が「落としてた?」と動いているように見えた。

 これで大丈夫だろう――。そう思った国府田さんだったが、すぐに非情な宣告が告げられる。二塁塁審が再びアウトコールをしたのだ。

 スタンドからはファンが何人も乱入して、判定への不満をぶつけた。国府田さんにとっては誰も知らない一般のファンだったが、大脇監督はフェアグラウンドに入ろうとした人々の首筋をつかんで、スタンド方向へと押し返した。

 3度目の抗議に向かった国府田さんだったが、内心では「もう覆らないんだろうな」と思いながら、二塁塁審に「本当にアウトなんですね?」と確かめた。塁審はやはり一度下した判定を変えることはなかった。

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