残酷でも切ない現実。センバツ交流戦出場の山梨学院監督が下した決断

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Sankei Visual

 2018年夏から3季連続で甲子園に出場した山梨学院は、2019年秋の関東大会で準優勝して2020年春のセンバツの出場権を手にした。しかし、大会の開幕8日前に中止が決定。監督、選手も落胆は大きかった。今の3年生が入学してから甲子園に連続出場しており、「次は自分たちの番だ」という思いが強かったからだ。

2018年夏から3季連続、今年の春のセンバツも出場が決まっていた山梨学院2018年夏から3季連続、今年の春のセンバツも出場が決まっていた山梨学院 2013年から山梨学院の監督を務める吉田洸二監督は言う。

「センバツ中止が決まった時は落ち込みました。命に関わることなので仕方がないと理解しつつ、『どうにかしてやれないものか......』という思いもありました。選手たちには、『今は悔しいだろうけど、夏の予選に勝って甲子園に行けたら喜びは倍増するはずだ。夏に優勝できるように頑張ろう』と言いました」

 しかし、事態は深刻さを増していく。5月20日、夏の甲子園の中止が決まった。

 その後も、満足な練習も練習試合もままならない日々が続いた。2009年春のセンバツで、清峰(長崎)を日本一に導いた実績のある吉田監督にとっても初めての経験だった。グラウンドの外から「なんで練習なんかしてるんだ」と怒鳴られたこともあったという。

「日本中に感染が広がるにつれ、生徒も指導をする僕たちも『(夏の甲子園開催は)きっと、無理だろうな』と覚悟せざるをえない状況になりました。ゴールが見えず、どこを目指していいのかわからないまま走っている感じでした。人間って、目標がないと頑張れない生き物なんだとあらためて思いました。

 親御さんは、選手よりも落胆が大きくて......。2020年になって、子どもの試合を全然見ていないんですから」

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