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「キャッチボールは必要?」。ドラフト
候補が考えたいきなり全力投球の調整法

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Sankei Visual

 毎年ドラフト候補のインタビューをしていて、勝手ながら「もし自分がスカウトだったら絶対にほしい」と感じてしまう選手がいる。今年なら、迷わず伊藤大海(ひろみ)の名前を挙げたい。

 話しているうちにこの投手の強い眼圧に引き込まれ、穏やかな口調で語られる独特な感性や思考にメモをとる手が止まらない。いささか気が早いが、「プロ野球はこんな選手が一流に君臨する世界であってほしい」と思わせるだけの引力がある。

昨年行なわれた日米大学野球選手権で好投した伊藤大海昨年行なわれた日米大学野球選手権で好投した伊藤大海 プレー姿を初めて見たのは、伊藤が駒大苫小牧に在学していた高校1年の秋だった。伊藤は1年生ながらエース格として明治神宮大会に出場する。だが、当時のサイズは身長173センチ、体重67キロと平凡で、球速は常時130キロ台前半に留まり、「総合力で打ち取る、うまい投手」という印象が残っている。

 それから5年後、全日本大学野球選手権で苫小牧駒澤大のエースとして再び神宮球場に戻ってきた伊藤は、同一人物とは思えないほど変貌していた。

 身長176センチ、体重80キロと肉体はたくましさを増し、エネルギッシュな腕の振りから放たれたボールは150キロを超えた。しかも、速球はただ速いだけでなく、一球見ただけで打者をひるませる迫力と球威があった。

 伊藤には空白の時間がある。高校卒業後、上京して駒澤大に進学したものの、1年で中退。すでにリーグ戦でも登板していたが、伊藤は「4年間プレーするビジョンを描けなかった」と振り返る。北海道に戻り、苫小牧駒澤大に入り直した。

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