2度目の春夏連覇。大阪桐蔭、西谷監督が語る「最強世代」の成長過程

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 岡沢克郎●写真 photo by Okazawa Katsuro

 2018年の高校野球界は、まさに大阪桐蔭の独壇場だった。全国の高校球児が「打倒・大阪桐蔭」を掲げるなか、史上初となる同一校による2度目の春夏連覇を達成した。

 2000年生まれの選手が多く揃う彼らは"ミレニアム世代"と呼ばれ、2016年春の入学時から注目を集めていた。

甲子園100回大会を制し、史上初となる2度目の春夏連覇を達成した大阪桐蔭甲子園100回大会を制し、史上初となる2度目の春夏連覇を達成した大阪桐蔭「今はネット社会で、入学前から『根尾(昂)はどうだ』とか『今年の大阪桐蔭はすごいのが揃った』と話題になり、そこへ彼らが最上級生の時に100回大会......そうした盛り上がりもあって、正直やりにくさはかなりありました」

 まだ何も始まっていないのに過剰な注目を浴び、大阪桐蔭の西谷浩一監督は世間の騒ぎと目の前の選手たちとの間にキャップを感じていた。

 注目の筆頭だった根尾についても、こう語る。

「入学当初の中田(翔)なら、誰が見てもすごいですし、大きく騒がれても仕方ないという気持ちでしたが、根尾の場合はそれとは違う。打者としての力で言うなら、森友哉は飛び抜けていましたが、そことも違う。

 もちろん根尾もいい選手ですが、森はほかにいないレベルのバッターでしたから。でもそういうことを言うと、僕が謙遜しているようにとられてしまって......。世間の注目と、とくに下級生時の根尾や藤原(恭大)の実力との間には、まだまだ大きなギャップがありました」

 根尾は2年時に春夏連続して甲子園を経験しているが、31打数8安打(打率.259)、0本塁打、7打点。投手としても2試合に登板して3イニングを投げたのみ。

 一方の藤原も、1年夏からレギュラーとして出場しているが、2年時の2度の甲子園では37打数7安打(打率.189)、2本塁打、3打点。センバツ決勝の履正社戦で2本塁打を放ちインパクトは残したが、ともに本格的な活躍はこのあとだった。

「根尾については、僕らのなかでは段階を踏んで順調に成長していました。でも、みなさんが思う根尾には達していない。そういう状態が続いていたと思います」

 それでも話題は常に先を走り、大阪桐蔭のミレニアム世代への注目度はマックスに膨れ上がった。その期待どおり、新チームは秋の大阪大会を制し、近畿大会も優勝。各地区の優勝校が集う神宮大会にも出場を果たしたが、ここでつまずいた。

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