あの夏の大フィーバーから4カ月。
再び甲子園を目指す白山高校の今
三重県の県庁所在地である津から、JRの路線を乗り継いで1時間あまり。途中で2時間に1本しか列車が走らない名松線に揺られ、家城駅で下車して徒歩10分。そこに白山高校はある。
小高い山々が連なり、広大な田畑が広がり、アルファベットの「C」の形に雲出川(くもずがわ)が流れる。のどかな風景に囲まれた定員割れの公立高校は、2018年夏に話題の中心になっていた。
2007年から10年連続で夏の三重大会初戦敗退。そんな弱小野球部だった白山が2017年夏に11年ぶりに夏の勝利を挙げて3回戦まで進むと、2018年夏はノーシードから勝ち上がって優勝。甲子園へと駒を進めてしまった。
新チームは秋の三重大会で初戦敗退を喫した 一部では「リアル・ルーキーズ」と呼ばれ、同名作品(テレビドラマにもなった漫画『ルーキーズ』)のごとく、さも部員がヤンキー集団のように見られることもあったが、野球部の東拓司監督の言葉を借りれば「自分に自信のない子たちの集まり」。3年生部員の多くは第1志望校の受験に失敗したコンプレックスを抱えていた。多少のヤンチャでチームに混乱を招いた部員もいるものの、「ヤンキー」と呼ぶにはかわいいレベルである。
季節は移り変わり、白山の町はすっかり平穏を取り戻している。それでも、いまだに白山には学校見学者があとを絶たないと東監督は言う。
「ありがたいことに、12月は学校見学の問い合わせがみっちり入っているんです。見に来てくれるのは、ウチのような田舎にある定員割れの学校の方が多いですよ。連合チームの指導者の方から励ましの電話をもらうこともありました。実感は湧かなかったけど、少しは希望を与えられたのかなと思います」
大会期間中、川本牧子部長は甲子園球場を訪れた高校野球ファンからこんな声をかけられたという。
「『昔の高校野球ってこうやったなぁと思い出した。だから白山が甲子園に出てくれてうれしい』と。そう言ってくださる方が何人もいましたね」
1 / 4