熊本の公立校に伝わる「PLの遺伝子」。
62歳の新監督が描く壮大な夢
熊本県立菊池高校――全国の高校野球ファンにとっては、まったく馴染みのない名に違いない。それもそのはずだ。甲子園出場は一度もなく、熊本県大会においても2007年以降は4回戦進出が一度あるのみ。出場する大会のほとんどが1、2回戦敗退の学校だった。
そんな無名の県立校に突然変異が起きた。今年、"夏の前哨戦"と目されているNHK旗大会で八代東、専大玉名、熊本国府といった県の実績上位校を次々と破る快進撃で準優勝を果たしたのだ。県大会決勝に進んだのは、じつに67年ぶりの快挙だった。
渡邉監督の指導のもと、悲願の甲子園出場を目指す菊池高ナイン 甲子園出場をかけた夏の熊本大会もベスト8進出。3回戦では今年春のセンバツに出場し、150キロ右腕・山口翔(広島がドラフト2位で指名)を擁する優勝候補の熊本工に4-3で競り勝つなど、NHK旗大会が決してフロックでなかったことを証明した。
チーム躍進の陰には、2016年4月に野球部監督に就任した異能の指揮官・渡邉和雄の存在が大きい。
渡邉は熊本県菊池郡旭志(きょくし)村(現・菊池市)出身で、PL学園、青山学院大と進み、社会人のリッカー、三菱自動車水島でプレーしたバリバリの野球人だ。
高校時代に甲子園経験はないが、社会人野球の最高峰である都市対抗で大会通算1000号本塁打を放つなど活躍。現役引退後は三菱自動車水島で監督を務め、八木裕(元阪神)や入来智(元近鉄など)をはじめ、6人のプロ野球選手を育てた。
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