イップス地獄から世界へ。元高校球児がライフセービングで見つけた道
ヨーロッパで発祥し、オーストラリアでは国技ともなっているライフセービング。90カ国以上の国が国際ライフセービング連盟に加盟し、海のある国はもちろんのこと内陸国でも普及しているスポーツだ。
浜辺と海の中で競うオーシャン競技と、プールで競うプール競技があり、種目数は20を超える。その種目のひとつ、ビーチフラッグスは伝統的に日本が強い。
腕を閉じて膝で回転する日本人の体格をいかした独自のスタート技術は、パワーで立ち上がる欧米のライフセーバーたちよりもスタートロスが少なく、日本勢の長所となっている。日本から世界トップランクの選手も多く出ており、現在は世界最高のスタートを誇る和田賢一(式根島LSC)がビーチフラッグスで全日本選手権3連覇、豪州選手権準優勝などの成績を残して強い日本の伝統をつないでいる。
高校時代は強豪校の野球部でプレーしていた和田賢一 どの試合でも誰よりも早くフラッグの方向に向き直って走り出すことができる和田だが、実はそのスタートは日本独自のスタート技術とはまったく異なり、海外選手から学んだものだ。
和田は2012年に全日本種目別選手権で優勝するも、翌年の全豪選手権は8位にとどまり世界の壁を感じていた。世界で勝負できるようになるにはスタート技術を追求することが必要と考え、2013年シーズン後、当時世界最速のスタート技術を持っていたサイモン・ハリスに教えを請うためオーストラリアへ向かった。
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