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イップス地獄から世界へ。元高校球児が
ライフセービングで見つけた道 (4ページ目)

  • 高橋博之●文 text by Takahashi Hiroyuki

 初めて出場したのが2009年の神奈川オープン。幸運にも優勝できた。このときに決勝で破った植木将人は全日本選手権を何度も制し、世界選手権でも2位になった選手だった。

「何も知らず、考えすぎずにやれたのがよかったと思います。実際に翌年の全日本選手権で再戦しましたが、今度は負けました。でも植木さんに一度勝てたことは自信になった。ビーチフラッグスなら世界に届くと思いました」

 神奈川オープンの勝利から3年、和田は全日本種目別選手権でついに優勝を果たした。このとき、和田はイップスで自分の思うように運動できなかった今までの自分と決別できたのを感じたという。心の中に溜まった鬱屈(うっくつ)した思いはすべて流され、今までで一番涙を流した一日だった。それからの和田の活躍はすでに紹介した通りだ。

 30歳を目前に控えた今、和田はライフセービングに対する考えが深まったと感じている。

「ライフセービングが他のスポーツと異なるのは『人のために』という思いから生まれたスポーツということなんです。『あの命を救いたい』という思い、だから勝ち負けよりも人を救えるかどうかです。僕は国際大会でも実績をあげることができましたが、僕よりも、毎日ビーチに出ているライフセーバーのほうが優れたライフセーバーですよ」

 和田はそう言って笑顔をみせた。

◆【イップスの深層】岩本勉のケース>>

◆【イップスの深層】中根仁のケース>>

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