甲子園よりも大切なこと。
胸熱くなる高校球児たちの
「それぞれの夏物語」 (4ページ目)
昨年から記録員としてベンチに入り、3年になってからは「よりチームに貢献できるように」と、練習の補助に全力を注いだ。
敗退が決まった直後の父兄へのあいさつで、美齊津監督はベンチを外れた3年生ひとりひとりを父兄たちに紹介し、彼らが果たしてきた役割と感謝の思いを述べた。そして最後に紹介されたのが、記録員を務めた磯田だった。
「この子には、あまり野球をさせてあげることができませんでした。でも......」
言葉は続かなかった。美齊津監督も磯田も、涙で顔をくしゃくしゃにしながら固く握手を交わすと、父兄やほかの部員から大きな拍手が送られた。誰もが磯田の献身を知っていたからだ。
勉強も中学時代より取り組めるようになり、「指導者として神宮に戻ってきたい」という夢もできた。そして最後に、磯田はこう胸を張った。
「誰もが試合に出られるわけじゃないけど、自分のようなヘタクソでも成長できる。続けていけばきっといいことがあると、後輩たちに伝えられたのかなと思います」
まだ歴史の浅い新興校では、こうした積み重ねが夢の舞台へと一歩ずつ近づく大きな原動力になっていくに違いない。
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