2016.08.14

スカウトも困った「投打の能力」。
東邦・藤嶋健人の適性はどっちだ?

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 迷いやためらいは一切なかった。

 打球が左中間を抜けたことを確認した藤嶋健人(東邦)は、一気に二塁ベースに到達した。スタンドは「また打ったよ」という驚きと、「二塁に行っちゃったよ」というどよめきが交錯していた。この打席の前に、藤嶋はすでに三塁打、本塁打、二塁打を立て続けに記録。あとシングルヒットを打てばサイクルヒットを達成できたにもかかわらず、藤嶋は二塁打を打ってしまったのだ。

初戦の北陸戦で本塁打を含む4安打を放った東邦・藤嶋健人 試合後のお立ち台でのコメントがまたふるっていた。

「ベンチでは『サイクル狙えよ』と言われていたんですが、僕が二塁に行けばまたチャンスが広がると思いました。二塁ならワンヒットで1点が取れる。自分のためよりチームのためなので、何とも思っていないです」

 サイクルヒットを達成するよりも価値のある二塁打を打った男──。大会記録には残らなくても、大会が続く限り語り継がれてほしい名シーンだった。

 この日、4番・ライトとして6打数4安打6打点と大暴れした藤嶋だったが、背番号1を着けているように、本来は東邦のエース・4番・主将の三役を担っている。そして「藤嶋は投手か、打者か」という議論は、スカウトやドラフトマニアの間で昨秋あたりからずっと続いており、その意見は真っ二つに分かれている。

 総合力が高くクレバーな「投」を取るか、爆発的な飛距離を誇る「打」を取るか……。大谷翔平(日本ハム)のように、「二兎」を追えるタイプではない。それぞれに長所がある一方で、投手としてはスケールが小さいという見方もあり、打者としては足が遅く、守れるポジションが限られるという弱点がある。あるスカウトは夏の大会が始まる直前、「この夏が最後の見極めの場になる」と語っていた。