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スカウトも困った「投打の能力」。
東邦・藤嶋健人の適性はどっちだ? (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 だが、愛知大会での藤嶋は投打で明暗が分かれた。「投」は34イニングで2失点といつも通りの安定感だったが、「打」は5試合に出場してわずか1安打に終わっている。打率は.077。チームの4番打者としては頼りない成績だが、チームメイトはどのように見ていたのか。

 東三河ボーイズ時代から藤嶋とチームメイトの二塁手・鈴木理央は言う。

「藤嶋はゼロで抑えてくれれば、打てなくてもいいかなと思っていました。いつ打つかわからないですし(笑)。本人も打てないことをネタにしたりしていましたし、暗さを表に出して雰囲気を悪くすることは一切ありませんでした」

 当の藤嶋も、試合開始前の取材で清々しい表情を見せていた。

「難しいことを考えずに、ラクに考えてフルスイングをしたいです。県大会では打てなくて考えることもあったんですけど、それよりも思い切ってやることが大事だなと。1年夏の甲子園は緊張感のほうがありましたが、今は緊張ゼロで、楽しさしかありません。最後なので、みんなで楽しんで思い切りやりたいと思います」

 春以降、藤嶋は打撃フォームを変えていた。グリップの位置を下げ、重心を低くしてガニ股に構える。このフォーム修正によって、今までよりもボールを手元まで呼び込めるようになった。

 甲子園春夏連続出場のプレッシャーから解放された精神的なゆとり。そして打撃フォームの修正。これらの要因が重なった結果、藤嶋はスカウトをさらに悩ませる爆発的な打力を見せつけたのだった。

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