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ドラフト戦線異状あり。田中正義の右肩不安でスカウトたちが大混乱 (3ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Jiji Photo

「関節がゆるくなっている」

 岸監督が明かした症状は、いわゆる“ルーズショルダー”の入り口だったのかもしれない。

「1位は田中って決まっていましたから。安心していました。さあ、困った。ドラフトまではじっくり、次を絞ればと考えていたのが、明日から1位を探しにいかないと……。そんなことあってほしくはないけど、万が一『出さない』ときのことも考えておかないとね」

 そう語る、あるプロ球団のスカウトの顔は笑っていたが、目は悲しそうだった。「出さない」とは、もちろん“プロ志望届”のことである。

「悲しいですよ。あれだけの逸材、ほかに誰かいます? 我々だって変な刺激を与えないために、控えめに、控えめに成長を見守ってきたんですから……」

 創価高時代、肩を痛めてまったく投げられなかった過去は、みんな知っている。大学に進んでも、「日本球界の至宝」(岸監督)と、大事に、大事に育てられてきた。

 それだけに、スカウトたちも「ケガだけはやるなよ……」とそっと見守ってきたのだ。

 私たちはいつも最悪のことを想定して動かないと……と前置きして、あるスカウトは次のように語った。

「田中の状態がそれほど変わらないとすると、集中するのは柳でしょう」

 それは同感。リーグ戦で、彼のよくない姿を見たことがない。いつも自分の持っている力量の100%を発揮して、チームを勝利に導いてきた。

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