ドラフト戦線異状あり。田中正義の右肩不安でスカウトたちが大混乱

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Jiji Photo

 2016年のドラフト戦線――そもそも、今年はいなかったんだ。

「いない」と言われていた昨年だって、高校生には高橋純平(県岐阜商→ソフトバンク)や平沢大河(仙台育英→ロッテ)がいたし、大学生にも今永昇太(駒澤大→DeNA)、高山俊(明治大→阪神)がいた。

安定感のあるピッチング見せる明治大のエース・柳裕也安定感のあるピッチング見せる明治大のエース・柳裕也

 もっとも不作と言われた一昨年だって、大学生には山崎康晃(亜細亜大→DeNA)や有原航平(早稲田大→日本ハム)がおり、高校生にも故障上がりとはいえ安樂智大(済美→楽天)、そして高橋光成(前橋育英→西武)がいた。

「ドラフト1位候補」と問われて、サッと名前が挙がる"大器"は、不作と言われようが何人かは必ずいた。

 だが今年はどうか?

 頭2つから3つは抜けた1位候補に創価大の剛腕・田中正義がいるが、そのあとが続かない。あえて挙げるとすれば、明治大の右腕・柳裕也ぐらいのもの。そらでスラスラと名前が挙げられる状況ではなかった。

 なのに、その田中にこの春、暗雲が立ち込めた。リーグ戦4週目の共栄大との試合。先発した田中は2イニングを2安打無失点に抑えたところで、突然の降板。そのときは右手中指の爪をやってしまった......ということだったが、その後の精密検査の結果、右肩関節炎と伝えられ、あわせて岸雅司監督からこの春のリーグ戦に田中は投げさせないという発表がなされた。

「やっぱり......」と言ったら怒られるかもしれないが、この報道を最初に聞いたときの本音はこれだった。

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