【高校野球】甲子園まであと一歩。ノーシード日立一高、激闘の夏 (5ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

 最後には全員揃って『てっぺんにカチこめ!』の三唱。昔取った杵柄(きねづか)で、小池は一塁側スタンドの一体感を高めることに成功した。小池も霞ヶ浦のことを「日立一高の大応援団を味方につけないと、厳しい相手」と見ていたのだ。

 だが、試合が始まると、やはり霞ヶ浦の牙城は堅かった。1回裏に2点を先制されると、試合は膠着状態に。チャンスはあったが、「ここ一番」で一本が出ない。6回まで霞ヶ浦の先発投手・安高颯希(あだか・さつき/3年)に1安打に封じられると、7回からはドラフト候補の長身右腕・綾部翔(あやべ・かける/3年)の前にパーフェクトに抑えられてしまう。結局、0対2で日立一高の30年ぶりの夢はかなわなかった。

 試合後、小池は監督の中山から「ゴメン」と声をかけられた。小池はチームをここまで育て上げた中山をねぎらいながら、「自分にもっとできたことがあるのでは?」と反芻(はんすう)していた。

「ウチの野球は、1試合に2~3回しかないチャンスを生かす野球です。でも、決勝戦では少ないチャンスで選手に気負いが見られた。『ここぞ』の場面でどう集中するか、その術を教えるのが僕たちの役目だと思っているので」

 日立一高の夏は終わった。そして、すでに「秋」が始まっている。皆川も小池も茨城準優勝という結果には満足せず、すでに次を見据えている。

「たとえトップ級のチームが相手でも、つけ込むスキはまだあると思っています。今年の夏は下級生に主力選手が多かったこともあり、秋はチャンス。センバツを狙っていきます」(皆川)

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