【高校野球】U18日本代表、小笠原先発に見た世界一への「教訓」

  • 柳川悠二●文 text by Yanagawa Yuji
  • photo by Nagase Yuya/PHOTO KISHIMOTO

 意外な男が先発のマウンドに上がった。1次リーグからここまで7連勝で、すでにU18ワールドカップ決勝進出が決まっている日本にしてみれば、2次リーグ最終戦のキューバ戦は消化試合である。しかし、西谷浩一監督(大阪桐蔭)は、甲子園優勝投手である151キロ左腕・小笠原慎之介(東海大相模)をマウンドに送り出した。

2次リーグ最終戦のキューバ戦で先発した甲子園優勝投手の小笠原慎之介2次リーグ最終戦のキューバ戦で先発した甲子園優勝投手の小笠原慎之介

「うれしい誤算ですが、この試合まで先発投手が頑張ってくれて、投手をつないでいく試合が少なかった。登板間隔の空いた選手が多かったので、今日しっかり投げて、明日の決勝は全員がスタンバイする形をとりたかった」

 西谷監督はそう振り返った。しかし、全勝優勝に向かって、惜しみなく左腕エースを投入したのは、前回大会の教訓に思えてならない。

 2年前に台湾で行なわれた前回大会でも、日本は2次リーグ最終戦まで無敗だった。最終戦の相手はアメリカで、今回と同様、その時点で、決勝で再戦することが決まっていた。西谷監督は決勝を睨んで主戦だった松井裕樹、安樂智大らの登板を避けた。いわば手の内を隠し、文字通り消化試合にしようとした。

 国際試合では定石の戦い方だろうが、一発勝負に慣れた日本の高校球児は、慣れない試合運びにエラーが続出し、4--10と大敗を喫してしまう。無敗で勝ち進んできた勢いは消え、決勝では2−3と接戦を演じたものの、アメリカに優勝をさらわれてしまった。

 日本開催となった今年の大会では、初めての世界一に向け、まるで甲子園を戦うように、負けられない戦いを西谷監督は若きサムライたちに強いたのである。

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