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【高校野球】甲子園まであと一歩。ノーシード日立一高、激闘の夏 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro

「声が全然聞こえないよ。本当にそれで、甲子園を目指しているチームのコーチャーなの?」

 皆川も小池も、「勝てる組織」になるにはレギュラーの技量はもちろん、ベンチメンバーがどんな「ベンチパフォーマンス」をできるかがカギを握ると考えていた。

 チームには背番号10をつけた赤津健太郎という、ベンチキャプテンがいた。小池に言わせると「役者になれる男」。シートノックから試合中まで、声とふるまいでチームを盛り立てることができる選手だった。

 野球部に入ったからには、誰もがプレーヤーとして活躍したいと思うものだ。だが、必ずしも全員が試合で活躍できるわけではない。その現実に直面したとき、「自分にはどんな役割ができるか?」と考えられるようにする。小池は「そういう選手を出すのが、自分たちの役目」と考えている。

 迎えた2015年夏。ノーシードの日立一高は、1回戦で科技学園日立と対戦する。雨で日程がずれた影響で、皆川も小池もこの試合を観戦することができなかった。試合は8回表まで1対1と接戦だったが、8回裏に日立一高が5点を勝ち越し、6対1で勝利した。

 問題は2回戦だった。茨城で一時代を築いた名門・水戸商が相手なのだ。近年はやや低迷気味の水戸商だが、小池の目には「1番から6番まで4番バッターのようだった。関東一に次ぐくらいの強打線」と映った。いざ試合が始まると、序盤からエース格の鈴木彩がつかまり、4回終了時点で0対5。皆川が「コールド負けも覚悟した」というほどのワンサイドゲームになった。

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