イニエスタ「自分はイチ選手ではない」。ケガの重症化を覚悟してPKに臨んだ (2ページ目)

  • 高村美砂●取材・文 text by Takamura Misa
  • photo by Getty Images

 シーズン終盤に差し掛かった時期の開催だったにもかかわらず、イニエスタは目を見張るパフォーマンスを披露。初戦の広州恒大戦では1アシスト1ゴールでグループステージ突破の立役者になると、続くラウンド16の上海上港戦でも先制ゴールを挙げ、チームの勝利に貢献する。そんな彼に導かれるように、チームも戦いを進めるごとに自信を膨らませ、クラブが目指す"アジアナンバー1クラブ"に向けて力強く歩みを進めた。

「昨シーズンの僕たちにとって、ACLはとても特別な大会でした。リーグ戦がまったく納得のいかない結果となってしまったなかで、悲しい思いをさせてしまったファンのみなさんに、自分たちの力を証明する最後のチャンスでもありました。

 だからこそ、チーム全員が特別な思いを胸にカタールに乗り込みました。そのなかで初戦の広州戦をいい内容で戦えたことも勢いになって、チームには試合を重ねるごとに『このタイトルをつかみ取れる』という確信めいた雰囲気が漂っていました。

 また個人的にも、昨年はシーズンを通していいコンディションで過ごせていたこともあり、ACLでもいい感覚でプレーできていたし、最後までベストコンディションでチームの戦いを後押ししたいと考えていました」

 だが、上海戦の後半、イニエスタは右太ももを痛めて途中交代。その時点でケガの状態は明らかにされず、彼は続く準々決勝の水原三星戦も控えメンバーに名を連ねたが、そのケガが深刻な状態にあることは、PK戦への突入を覚悟でピッチに立った延長後半、113分以降のプレーで明らかになった。そこに、本来の彼の輝きはなかった。

「チームの流れにブレーキをかけたくないと思い、水原戦もベンチからチームを見守ることを決めました。そして、延長後半からピッチに立ち、PK戦にもつれ込むと、最初のキッカーになることを志願しました。

 正直、自分の体のことは自分が一番よくわかっているので、あの1本を蹴ることで、より大きな痛みを感じることも想像できましが、チームメイトが戦う姿を見て、『できる限りの力を尽くしてチームを助けたい』という気持ちを優先しました」

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