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【新車のツボ87】
ボルボS60ポールスター試乗レポート (2ページ目)

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 96年に設立されたポールスターが市販車を1台まるごと手がけるのは今回が初。もっというと、ボルボがこれほどマニアなスポーツモデルを発売するのも史上初の快挙といっていい。しかも、今回は世界限定750台というレアもの。なんだかんだいっても、日本はこの種のマニア物件がけっこう売れる市場なので、日本販売分はそのうち90台にものぼる。

 さて、この種のメーカー純正のマジモノチューニングカーというと、普通の感覚ではとても公道で乗る気にならないほど、うるさくてガッチガチのケースもなくはない。しかし、このS60ポールスターは、強いていえば、私が心酔してやまないルノースポール(第66回参照)に似たタイプ。基本的にはパワー絞り出し&アシ締め上げ系なんだが、本物のプロフェッショナルが丹精を込めた絶妙な"寸止め"の仕上げ。走るシーンによっては普通のクルマより快適であったりするし、あらゆる操作に正確にピタッと反応するので、慣れると運転しやすいことこのうえない。

 エンジンは直列6気筒にターボを組み合わせて、盛大にパワーを出したタイプ。排気量は3.0リッターだが、最大トルクは5.0リッター級である。量産エンジンで直列6気筒というと、ほかにはBMW(第69回78回参照)くらいしかない。

 今どきは直列6気筒というだけで、マニアのツボはヒクヒクするのだが、このポールスターエンジンは、まあ、気持ちいい。もともと直列6気筒とは回転でツブが揃って"泣き"が入るエンジン形式であり、今回のようにプロが本気で仕上げた直列6気筒となれば、そりゃもうトップエンドで甘美なハイトーンでわなないて、アクセルペダルに乗せた右足にむしゃぶりつくように反応する。ハッキリいって、マニアはこのエンジンだけでゴハンが何杯でも食べられる!

 もちろん、このクルマもあのボルボが市販する商品なので、掛け値なしに世界最高峰の自動運転系ハイテクや安全性能はすべて備わる。だいたい、この種の本物のスポーツモデルは「まかり間違えば......」という危険な薫りがただようもので、誤解を恐れずいえば、そこもまたマニアのツボだったりする。しかし、ポールスターはちがう。「死ぬほど速いのに、ぜんぜん死ぬ気がしない!」というところが、なんだかとっても新しいツボである。

【スペック】
ボルボS60ポールスター
全長×全幅×全高:4635×1865×1480mm
ホイールベース:2775mm
車両重量:1780kg
エンジン:直列6気筒DOHCターボ・2953cc
最高出力:350ps/5250rpm
最大トルク:500Nm/3000-4750rpm
変速機:6AT
JC08モード燃費:9.6km/L
乗車定員:5名
車両本体価格:799万円

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