【新車のツボ69】BMW4シリーズ試乗レポート

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 車名のひとケタめが4となるBMW(=4シリーズ)は、今年秋に上陸したブランニューである。ただ、クルマそのものの成り立ちは、当連載37回で紹介した3シリーズの2ドアクーペ版......以外のナニモノでもない。

BMW435iクーペBMW435iクーペ 今となっては信じられないことだが、昭和時代は日本車でも、ひとつのクルマに4ドアと2ドアがあるのが常識だった。ただ、当時の日本の2ドアは「ドアが少ない=構造が単純で、実用性も低い=だから安い=金のない若造のためのクルマ」の論法でつくられていた。だから、日本の2ドアは若々しいのと同時に、どことなく安物感がただよっていた。

 しかし、この4シリーズは車名からもわかるように、2ドアなのに4ドアの3シリーズより上級商品に位置づけられる。実際、同じエンジンを積む328iセダンと428iクーペでは、後者のクーペのほうが30万円前後も高い。しかも、日本では高性能な300馬力級の6気筒ターボエンジンはクーペ限定......と、"クーペのほうがエライ"という戦術をドイツ本国よりさらにハッキリと打ち出す。

 クーペ発祥の地である欧州では、セダンよりクーペのほうが贅沢とされる。そこで「なんで実用性が低いほうがエライんだよ!?」とか「ドアが多いほうがコストがかかるだろがっ!!」といった、しみったれた理屈をこねるのは無意味。それが社会慣習なのだからしかたない。カッコつけて言えば、違いのわかる本物の大人が"家族や実用のしがらみを忘れて、ハレや遊びの場に乗りつけるための嗜好品"が、2ドアクーペ本来の意味である。

 ......と、自分で書いておいてなんだが、そういうクーペ本来のありがたみも日本ではほとんど理解されないので、細かい講釈や理屈はどうでもよろしい。ここで4シリーズを取り上げた理由は、単純明快である。このクルマは素直にカッコイイからだ。それも尋常でなくハンサムだからである。そして、4シリーズのなかでも、とくに6気筒エンジンを積む"435i"のキレキレの走りが、私のツボをチュドーンと射抜いたからである。

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