【新車のツボ68】フォード・クーガ試乗レポート
今年もたくさんの新型車が発売、上陸した。今年新発売されたピッカピカの新型車のなかでも、私が「これは隠れた名車だ!」とひそかに確信したクルマがこれである。この場合、あくまで"隠れた"なのがツボである。たとえば、今年の日本カーオブザイヤーを獲得したVWゴルフも名車といえば名車だが、日本でも老若男女が知っているゴルフは隠れていない。だからゴルフに乗っていると、だれもが素直に「いいおクルマですね」と声をかけてくれちゃうところが、アマノジャクである私のツボに反する(?)。
ただ、このフォード・クーガが"隠れた"存在なのは、少なくとも先進国では日本だけだ。知っている人も多いように、フォードはわれらがトヨタと世界販売トップの座をいつも争うメガ自動車メーカーのひとつである。本連載18回のエクスプローラーでも紹介したように、本場アメリカではフォードは押しも押されもせぬSUVのトップブランドにして、クーガ(アメリカでの車名はエスケープ)はその主力商品。また、欧州でもフォードはVWとならぶメジャーブランドであり、クーガは日本でいうところのマツダCX-5ばり......の、まったく隠れてない人気車である。
そんなクーガの内容は、だから、あくまで王道中の王道だ。シツコイようだが、米欧では売れ筋のど真ん中。奇をてらったところはなにもない。逆にいうと、もともとフォードのブランドイメージが薄い日本では、だからクーガはよけいに隠れてしまうのである(涙)。
カタログやニュースをいろどる奇異なところはなにもないクーガだか、中身は最新鋭にして、素晴らしくよくデキている。エンジンは欧州で流行中の小排気量ダウンサイジングターボ。こんなナリして排気量は1.6リッターしかないが、ターボ付きなのでパワーは普通の2.5リッターに匹敵する182ps。実際の走りもすこぶる力強く、しかも他社のダウンサイジングターボにありがちな、アクセルを踏んでからドーンと蹴り出されるまでの"間"がほとんどない。それに電子制御4WDもハードウエアは他社のものと同じなんだが、エンジンの強力パワーをシレッと受け止めて、まるで4WDとは思わせないところが、逆にスゴイのだ。
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著者プロフィール
佐野弘宗 (さの・ひろむね)
1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/