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【新車のツボ68】
フォード・クーガ試乗レポート (2ページ目)

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

  乗り心地はまるで空からワイヤで吊るされたように上下動がない。ボディが水平のままチュドーンと直進して、ピキピキ曲がる。これをなんの電子制御もないアナログ技術でやっちゃっているところが、クーガのスゴさだ。

 ......と、いろいろ細かく説明しても、クーガ本来のツボはそこではない。クーガはとにかく運転しやすい。なんというか、人間と人間生活をマジメに研究してつくった感がアリアリ。エンジンやATは右足指に吸いつくように加減速するので、混雑した街中でもブレーキを踏む頻度がすごく低い。なんにも意識しないでステアリングを操作するだけで、クルマがピタリとねらったところにいく。......と、こういう普通のことをクーガのようにすさまじく高いレベルでやってのけるクルマはそうない。

 それから、クーガには「フォードはやっぱりSUVだなあ」と思わせるポイントが数えきれないほどある。

 たとえばエアコンの吹き出し口も普通のクルマより2つ多くて、それがダッシュボードからちょうどフロントシートのお腹から太ももあたりに吹きつけるようについている。これ、寒い雨や雪の日に服が濡れたまま乗り込んだときには重宝する。また、シートも一見すると平板で乗り降りしやすいのだが、長時間のドライブでもまったく疲れない。ドライビングポジションはどんな体格や好みにもピタリと合う。ちなみに、クーガには最近話題のレーダー式の低速衝突ブレーキがつくのも嬉しい。

 クーガのような存在こそ、本当の意味でツボを突くいいクルマだと私は信じる。日本ではだれがどう見ても"隠れた"存在のフォード(とくにクーガのような欧州開発のフォード)やルノーが、この連載ではやけに頻繁に登場しているのは、奇をてらったウケねらいでは決してない。この両社のクルマが"飛ばしても飛ばさなくても以心伝心"ゆえの運転のしやすさを持っているからである。

 もっとも、 "運転しやすい"なんて表現は当たり前すぎてツボが伝わりにくいのが、もどかしくて仕方ないのだが、とにかくフォードやルノーの経験がない人は乗ってみてほしい。この世にはいかに運転のツボをはずしたクルマがあふれているかを実感できるから。

【スペック】
フォード・クーガ・タイタニウム
全長×全幅×全高:4540×1840×1705mm
ホイールベース:2690mm
車両重量:1720kg
エンジン:直列4筒DOHCターボ・1595cc
最高出力:182ps/5700rpm
最大トルク:240Nm/1600-5000rpm
変速機:6AT
JC08モード燃費:9.5km/L
乗車定員:5名
車両本体価格:385.0万円

著者プロフィール

  • 佐野弘宗

    佐野弘宗 (さの・ひろむね)

    1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/

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