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【新車のツボ33】
トヨタ・ランドクルーザー 試乗レポート (2ページ目)

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 このランクル200はちょっと前まで"日本でもっとも盗まれやすいクルマ"という不名誉な称号を得ていた(最新モデルはセキュリティ装備がすさまじく高度化しているので、かつてほどの危険はないという)が、それも視点を変えれば「それだけ世界中にほしがっている人がいる」のと同義である。

 もちろん、インフラが整った日本で、しかもワタシ程度のヘタレが、そんな"ランクルの真髄"を試すことなど不可能だ。ただ、よじのぼる(今なお堅牢な独立フレーム構造だから床が高い)ようにして運転席に座り、周囲を見下ろして走れば、さしずめ"中東の王族"の気分である。ランクル200は砂漠の国のセレブ御用達でもある。

 ランクルがとにかくとんでもなく頑丈で重いのは、舗装路を流して走るだけでもビンビンに伝わる。軽自動車3台分(!)の重量を4.6Lエンジン(しかもハイオク指定!!)で動かしているので燃費経済性は最悪だが、このグワシッと重厚な快適性と、この"陸の王者感"が味わえるなら「ガソリン代くらいいくらでも払ったるわ!!」といいたくもなる(本当に所有するなら、かなりの甲斐性が必要だけど)。エアコンもさすがに強力で、外界の喧騒を遮断した浮揚感は、いまどきの乗用車ベースのSUV......つまりナンチャッテオフローダー(失礼!)とは異次元の乗りモノだ。

 ボディサイズは巨大だが、日本の街中でも意外にストレスがないのは、とにかく車両感覚がバツグンだからだが、これもまた「数cmの走行ラインのズレ=谷底真っ逆さま!?」の過酷なシーンを想定した設計だからだろう。

 この連載では何度も書いているが、マニアにとって"プロ仕様"の過剰品質はツボ中のツボである。ランクルが何のプロ用なのかは定かでない(!?)けれど、仕事でも趣味でも冒険でも「命がけ」のときはランクルをどうぞ。とにかく、見た瞬間、乗った瞬間に「世界滅亡しそうになったら、頼れるのはランクル様」と思わせるオーラはすごい。

 これほど異質なオーラがただよう国産車は、ジャンルは違えど、ほかには日産GT-Rくらいしかない。ランクルとGT-Rはニッポン工業技術の誇りだ。


【スペック】
トヨタ・ランドクルーザーZX
全長×全幅×全高:4950×1970×1870mm
ホイールベース:2850mm
車両重量:2690kg
エンジン:V型8気筒DOHC、4608cc
最高出力:318ps/5600rpm
最大トルク:460Nm/3400rpm
変速機:6AT
JC08モード燃費:6.7km/L
乗車定員:8名
車両本体価格:630万円

著者プロフィール

  • 佐野弘宗

    佐野弘宗 (さの・ひろむね)

    1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/

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